存在の叫び
LiSA 様
存在の叫び
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「それは素敵な考えです!んんん…このメンバーだけでは勿体ない!他の亜人や獣人、人間の音楽家にも声かけますね!」
バンドのリーダーらしきドワーフが目を輝かせ、こうしてはいられない!と店を飛び出した。各々がライブの準備を初め、アキネも早めに開店準備を終わらせて、ライブスタジオの設置を手伝った。程なくして、亜人や獣人、人間…様々な人種の団体が店に現れた。
「え!待って、すごくない?全員入るかなぁ…」
「抜かりありませんよ…」
ドワーフは不敵に笑った。
「キリエの商店街でライブイベントの申請がありまして!!」
いつものバタバタ煩い足音の後、眼鏡のズレたニフが息を切らして現れた。既にドワーフは理事会にも申請を出し、派出所を楽屋として借りる手立てをしていたらしい。
「ニフさんから聞きましたよ。アキネさん、王家の結婚式に歌を披露したのだとか。是非ライブに出て頂きたい」
ニフめ、余計な事を。キッと睨んだが、理解してないニフは笑顔で返した。
開店時間。様変わりした店内に常連客は目を丸くした。そこへトップバッターの獣人グループが現れ、獣の特性をフルに活かした力強い咆哮混じりのライブを行った。ギターやドラム、ベース、全てが大音量だが、そのカッコ良さに誰もが耳を傾けた。配分の妙、酒場の客はそのビートに魅了され、一気に場の空気は最高潮になった。
次に愛らしい人間の少女たちが会場に上がり、歌に合わせて息のあったダンスを披露した。全員で歌ったかと思うと、ソロで歌い出したり、会場に語り掛けたりと多様なパフォーマンスをする。このグループのファンだろうか、様々な人種の男達が蛍石を加工して作られた光る棒のようなものを振り回し、合いの手を入れながら曲に合わせて踊り出す。
「色んな歌や演出があるんですね…」
ニフは心から驚いて呟いた。
「本当に音楽ひとつでも色々だよ!旅をしてて色んな文化を知ってきたけど、国や人種が変わるだけで同じ楽器でも全然違う表現になるしね。でもさ…」
アキネは穏やかに微笑んだ。
「でもさ、どこへ行ってもどんな曲を奏でてても、皆音楽が好きで、自分の歌を奏でてる事は何も変わらない。私たち亜人が他の人種と同じように笑ったり悲しむ様にね…」
アキネはゆっくり立ち上がって舞台へ上がった。
「今日は皆ありがとう!いつもの顔に…新規のお客さんもいるね。今日は人種とか性別とかそういうのとっぱらって、この時間を楽しんでいって!!」
ドワーフがカウントをとる。アキネは静かに息を吸い込み、そして、己の全てをかけて想いを声に乗せて歌い出した。生きている意味、ダークエルフとして存在する意味、皆と繋がり進む意味…
「僕を連れて進め!!!」
入口が騒がしい、男の怒鳴り声が聞こえる。
「ぅおおぃ!!ここかよ!野蛮なダークエルフのアマが営んでる店はよぉおお!!」
あの時に絡んできた男だった。殺気立った表情でアキネを睨みつけ近づいた。ザワつく店内、獣人グループが牙をむき出して男に迫ろうとしたが、アキネは歌いながら制止し、男を見すえて歌う。
「紅蓮の華よ咲き誇れ! 運命を照らして」
圧倒的な想いの前に、男は足を止めてしまった。そのまま屈強な客達に男は捕まり外へと追い出された。歌のみでこの場を収めたアキネに拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
「…よぉぉー。人が騒ぎに紛れて気持ちよく飲んでる時によくも水刺してくれたなぁ…やっさしい俺でも、ちぃとおたくさんの蛮行は目に余るんだよね…」
男を追い出した客の1人がドスの効いた声で囁いた。燃えるような赤い髪に、ふてぶてしい花炎石の指輪、ギラギラした目の男だった。後に暴れた男がキリエで目撃されることはなかった。
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人種の垣根を越えて皆でライブを楽しみました。
「バンドメンバーとの約束」
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