D60 加州清光
紫苑本丸
D60 加州清光
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#紫苑本丸
D60 加州清光
今日は珍しく大広間に主以外の全員が集まっていた。
いつもなら畑当番やご飯の仕込み等してるはずなのに。
「あれー、みんなどうしたの?」
「あぁ、清光…それがさ。」
そういう安定の傍には…今にも泣きそうな今剣の姿があった。
そしてそれを囲むようにしてみんなが座っている。
「主のこと…だよね。」
今剣はこの本丸の誰よりも主に声をかけて主に元気になってもらおうと頑張っていた。
しかしその反面1度も主と話したことがないのも今剣だった。
「ぼく……あるじさまに、きらわれてるんですか?」
「そんなことは…ないと思う。」
主の気持ちを直接聞いたわけじゃないけど、きっと主は今剣が嫌いなわけじゃないはずだ。
自分に対してこんなにも頑張っている今剣にどう接すればいいか分からない…そう思っていると俺は思う。
でも、それを今剣に話して納得してもらうほど今の今剣は強くない。
「僕も…主は今剣さんのことを嫌っているわけじゃないと思います。数日前主と花言葉の話をしていたのですが…竜胆の花言葉は何かと僕に聞きました。」
「竜胆って確か……今剣の紋にもありましたよね!」
「はい、堀川さんの言う通りです。そして主はあの子に良く似合う花だねと言っていました。だからきっと、主は今剣さんのことを嫌いなわけではないと思います。」
「あるじさまが……。」
「ねぇ、…思ったんだけどさ。僕…主ならきっといつか感情がいまよりずっといっぱいになる日が来ると思うんだよね。今剣だけじゃなくて僕達みんなで主を笑顔にするってのはどうかな?」
その言葉を聞いて今剣は顔を少しずつ明るくした。
「待ってくれ、俺は主が変わりたいと思うことが大切だと思う。だから…主の今の気持ちが知りたい。」
主が変わりたいと思うこと…か。
確かに太鼓鐘の言ったことに間違いはないな。
「わかった。じゃあ俺が聞いてくるからみんなはここで待ってて?」
きっとこれは初期刀である俺の役目だからね。
ー
「ってことなんだけど主はどう思う?」
感情が無い主に対してそう聞くのはちょっと問題だけど皆無ってわけじゃないから。
そもそもこのままだったら審神者になった意味がわからないから。
「私は…、笑うことができるかな。」
主の返答に対して…消極的ではあるけど拒否している訳ではなくてひとまず安心した。
「それは主次第じゃない?…でも、笑いたいって…笑ってみたいと思うなら俺達は協力したいと思ってる。」
「わかった。」
「それは…肯定でいいんだよね?」
「うん。」
主ならそう言ってくれるって信じてた。
なんだか嬉しくなって俺は主の手をぎゅっと握りみんなの所に連れていくことにした。
「みんなーー!主が良いってさ!!」
勢いよく2人で部屋に入ると今剣が元気で主に抱きついて行った。
「あるじさま!!これから、いっぱいいっぱいおもいでつくりましょうね!」
「…ありがとう。」
たった一言だけだけど、今剣はその言葉で満開の笑顔を咲かせた。
いつか主も今剣みたいに笑える日が来るんだろうと思うと楽しみでならない。
「よーし、それじゃあ各自で主としたいこと考えとくこと!…主もね?」
「うん。」
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