朗読『入射角』
台本:たけねこ ピアノ:夏柑さん
朗読『入射角』
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「まーた、あんなもの拾ってきて・・・」
台所の流しの上に
いくつかの石ころ
少し歳の離れた弟が
外で遊んだ際に拾ってきたものだろう
「お母さんに捨てられちゃうよ」
冷蔵庫を開けて麦茶を取り出す。
コップに注ぎながら2、3歩進んだ時に
ふいに右目に光が飛び込んできた。
「…っ!?」
石ころの中に
少し透き通ったものがあった
どうやらこれに、陽の光が反射したらしい
手に取っておもむろに覗き込む。
無数についた小さなキズが
石の中で光を散らばらせて
まるで万華鏡のようにキラキラと
彩やかな世界を創り出していた。
少し手を動かせばそれは
また違う表情と色を見せ続ける・・・
数分後
喉の乾きと共に正気に戻った
汗まみれのコップに入った麦茶を
一気に飲み干した。
夜
再び台所に来ると
弟が母親へ文句を言っていた
あの石は捨てられてしまったようだ
ちょっとだけ
弟に同情した。
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