【一人声劇】涙海日和【台本】
朗読者【ごんだー】
【一人声劇】涙海日和【台本】
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#声劇 #台本 #1人声劇 #mitagraph #波 #波の音 #ff #植松伸夫
灯台の見える浜辺に腰を下ろす
右手には花束、左手には遺灰を持って
「この海、好きだったよね(な)」
「コバルトブルーなんていいもんじゃないけど、
いつも潮の香りがしてさ」
「死んだらお互いここに遺灰を撒こうなんて
縁起でもないこと言ってたの
本当になっちゃったじゃない(だろう)」
「どうしてくれるのよ(んだよ)…」
ほんのちょっと目を離した隙だった
キミは波にさらわれていった
きっと、海の神に魅入られてしまったのだろう
あっという間の出来事だった
「わたし(オレ)の骨は
一体誰が撒いてくれるの(んだよ)…!
ねえ(なあ)…!」
叫んでも何も返ってこない
ただ潮騒だけが満ちては返し、満ちては返し
その音をぼんやりと聞いているうちに、やっと涙がこぼれてきた
今まで通夜でも葬儀でも流れなかった涙が
潮の満ち干きのように揺らぎながら溢れ出る
「(泣く)」
遺灰を掴んで慣れ親しんだこの海に撒く
彼(彼女)は喜んでくれるだろうか
答えはわからない
だけど潮騒の音がさっきより優しく聴こえたのは
嘘ではないと思うのだ
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