affetto(ストーリー)
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affetto(ストーリー)
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🍎ありふれた毎日。ありふれた景色。
その毎日を、景色を、ほんの少しだけでも変えることができたら─────
「おはよ!みどりちゃん!見て見て!」
机で本を読んでいた緑色の髪をした少女に、まだ幼さが残る顔立ちの少女が話しかける。
「おはよう、姫梨(ひめり)ちゃん。どうしたの?.........って、え?『アイドル部、部員募集中』.........?」
不思議そうな顔で、みどりは姫梨の問いかけに応じた。
「そう!アイドル部!前から私、アイドルってキラキラしてていいなって思ってたんだけど...1人じゃ心細くて.........。」
そう言って、姫梨はみどりをじっと見つめた。
「ええ...?そんなにじーっと見つめられても...まさか、こんな本の虫を連れていこうっていうんじゃ.........ない、よね.........?」
明らかに困っている様子のみどりだが、姫梨は折れない。
「大丈夫だよ、みどりちゃん可愛いし!元々部員の大半は卒業した昨年度の3年生だったみたいで、今は3人で活動してるみたいなの。それで、5人以上募集してるみたいなんだけど.........。」
そう言って、再び姫梨はみどりをじっと見つめた。
「.........その5人以上のうちの1人に私も......?そもそも歌だってそんなに歌ったことないし.........。」
自信なさげに、みどりがそう呟いた。
「じゃあ、今日の放課後一緒にカラオケ行こ!お姉ちゃんと麗音ちゃんも誘うから!ね、お願い...!」
必死に頼み込む姫梨。そんなにアイドルに思い入れがあるのだろうか、とみどりが折れた。
「わかった。いつものメンバーの前なら...大丈夫...かな?」
言葉とは裏腹に声が震え気味なみどり。
余程緊張しているのだろう。
「わあ...ありがとう!そしたら休み時間にお姉ちゃん達のところ、行ってくるね!」
先程の必死な顔とは反対に嬉しそうな笑顔を見せる姫梨。
「はあ......大丈夫かな...。でも、あんなに必死な姫梨ちゃん、見たことないし......うーん...。」
不安そうに呟くみどりの声が聞こえているのかいないのか、姫梨は上機嫌で自分の席に着いた。
🍀翌日の放課後、再び4人は集まった。
「アイドル部、最低5人は集めないといけないのよね?」
紅葉が姫梨に問いかけた。
「うん。5人以上って書いてあったよ。でも......私たちは.........。」
と姫梨が3人を見つめ、
「「4人.........。」」
みどりと麗音がほぼ同時に呟いた。
「そういえば、性別に決まりはあるのかしら?姫梨は男性アイドルのライブにも行くじゃない?」
と、再び姫梨に紅葉が問いかけた。
「そっか。女の子じゃなくちゃいけないってわけでもないのかな。うちの学校、共学だし...。」
と姫梨が答える。
「あ、そういえば姫梨ちゃんから見せてもらったチラシに作詞作曲が出来る人も募集してるって書いてあったような.........。」
姫梨の答えに、みどりがそう付け足した。
「じゃあさっ、ストリートライブやってる学生に声掛けてみたらどうかな?私服でも声掛けたらうちの学校かもしれないしっ。」
麗音の提案に、一同は「「「ストリートライブ.........」」」と口を揃えた。
「うん!決まりね。じっと待ってても入部希望者が増えるわけじゃないし、探しに行きましょ!」
紅葉の掛け声を合図に、4人は街へ飛び出した。
🏖4人の住む町の駅前に着くと、今ちょうどストリートライブをやっている少年の姿があった。
「あ、お姉ちゃん!皆!あの男の子!」
嬉しそうな姫梨の声が響く。
「......!!聞いたことのない曲ね。オリジナル曲かしら?」
紅葉も聴き入っているようだった。
そこで曲が切り替わる。
「ねね、紅葉、ひめりん、みどりんっ!あの男の子...即興演奏してる気がしない?」
麗音が問いかけた。
「確かにそんな気がする......。どちらにせよ、オリジナルソングで決まり、ですかね?」
みどりが言った。
「そうね。4人とも聞いたことのない曲となれば、オリジナルで間違いなさそう。ってことは...どうする?姫梨、声掛けてみる?」
紅葉が姫梨に問いかける。
「う...うん!でも...どうしよう......私、男性アイドルは好きだけど、自分と近い年頃の男の子と実際に話すの...あんまり、得意じゃなくて......。」
姫梨が言葉に詰まる。
「よし!お姉さんに任せてっ!私が話しかけに行ってくるよっ!」
麗音が自分の胸をトンっと叩いてみせた。
🔔麗音が歌い終わった直後の少年に近づく。
「ねえねえ、キミの歌いいねっ!オリジナル曲なのかなっ?」
初対面の相手にもテンションが高い麗音。よく言えば「元気」や「フレンドリー」といった言葉が当てはまるだろう。
「あざっす。オリジナル曲...っていうか即興曲ですね。その時に思いついたイメージに合わせて曲をつけてそこに歌詞を乗せて歌うんです。」
少年が自分の歌っている歌について麗音に説明した。
「そうなんだ.......!!すごいや、作詞作曲できるだけでもすごいのに即興曲だったんだねっ!ところでキミ、今私服だけど学校は?私と...向こうにいるのが私の友達なんだけど、私たちは今着てる制服の通り、早川高等学校の生徒だよ!」
「僕も、なんすけど.......。」
少年が言葉に詰まる。
「どしたの?あ、なんで学校名聞いたのか気になったのかな...?えっと、ね......。実は、向こうにいる友達がアイドル部の部員募集のチラシ貰ってさ、作詞作曲が出来る人を募集してるみたいなんだよね。そこで、ちょうどキミの素敵な演奏に出会ったから、もし同じ学校ならお誘いしたいなって思って!」
麗音が事情を説明した。
「アイドル部......そうだったんすね。僕も早川高等学校っすけど...でも僕、不登校っすよ.......?」
少年はあまり学校には行っていないようだった。
「将来アーティストや作曲家になるのが夢なんすけど、自分がなんの為に高校行ってるのかわからなくて。それで、普段は自室にこもって曲書いたり、作詞の参考に読書したりしてるんすよね。」
少年は麗音に、そう打ち明けた。
「そうだったんだ...。そしたら、向こうの緑色の髪の子が作詞の手伝いできるかもしれない......!本の虫って呼ばれるくらいの子だからさっ。そうだな.......明日も放課後、会えたりするかな.......?改めて向こうの3人も合わせて、5人で話がしたいなって。あ、話に夢中で名乗るのをすっかり忘れてた...!私、竹下麗音っていうんだ!」
麗音の問いかけに、少年が応じる。
「明日っすか...?いいっすよ。僕はリクっていいます。それじゃ、明日、駅前で。」
💕翌日の放課後、姫梨たちは再び駅前へ向かった。
駅に着くと、改札付近の柱に少年が寄り掛かって読書をしているのが見えた。
「あっ!リクくーん!こっちこっち!」
リクは麗音の掛け声に気づき、本をしまい歩き出した。
「麗音さん。...と、皆さん初めまして。リクです。」
姫梨たち3人に向かってリクが軽く会釈した。
「昨日の歌、良かったわ。私は加藤紅葉。よろしくね。こっちは妹の姫梨と、姫梨の同級生のみどりちゃんよ。」
紅葉の挨拶に、みどりが続けて口を開く。
「初めまして。桜丘みどりです。普段読書ばかりしているので作詞の時に言葉選びで困ったりしたら、もしかしたら何か力になれるかもしれません。よろしくお願いします。」
更に、姫梨が続く。
「...加藤姫梨、です。よろしくお願いします。...あれ?平気だ...なんで......?」
不思議そうな顔を浮かべる姫梨。
「っと、立ち話もなんだし、そこの喫茶店入ろーっ!」
麗音の提案に皆が応じ、5人は喫茶店へと向かった。
💧「...僕の歌、そんなに気に入ってくれたんすか?」
リクの問いに、皆が「「「うん(はい)!!!」」」と口を揃えて言った。
「即興とは思えないほど、世界観や想いが伝わってくるというか...私も読書はよくしますが、すごくしっかりしたストーリー性を感じました。」
みどりの意見に3人が頷いた。
「確かに、私もあれには驚いたわ。それに、私たちと同年代なんだもの。高校は私たちと同じって言ってたけど、学年は?」
紅葉の問いにリクが答える。
「2年生...っす。...不登校なんすけどね。」
あはは、と困ったように笑った。
「でも、どうしてですか?もしかして...病気がち...とか...?」
姫梨が心配そうに見つめる。
「あ、いや...そういうんじゃ、ないんすけど.......学校行くと、浮くんすよね、僕。」
「「「「え.......??」」」」
4人は驚いた。
「なんで?あんなにいい歌書くのに...!むしろ人気者になってもおかしくないと思うけどなあ.......。」
と麗音。
「一人でいる方が好きで、孤立しちゃうとか...?」
と紅葉。
「読書ばかりしてると、確かに浮きやすい、かも.......。実際私も友達多くないしなあ.......。」
とみどり。
皆が理由を考える中で、一人不思議そうな顔で姫梨だけがリクを見つめていた。
🍁不思議そうな顔でリクを見つめ続ける姫梨。
「姫梨、どうしたの?そんなにじっと見つめたらリクくんに失礼じゃない?」
と紅葉が諭した。
「あっ...ごめんなさい。そういうつもりはなかったんですけど...なんかずっと引っかかってることがあって.......。」
何やら姫梨には気になっていることがあるようだ。
「そういえば姫梨ちゃん、初めて話した時から不思議そうにしてた...。」
とみどりが言う。
「そういえばひめりん、最初にリクくんがストリートライブしてた時「男の子と話すのが苦手だ」って言ってたよね。」
麗音が思い出したように言った。
「そう...!そうなの.......!リクくんには何故か目を見て話せるし、なんでなんだろうって、ずっと...思ってて.......。」
その言葉を聞いたリクは「ふぅ...。」と息を吐き、こう切り出した。
「.......実は、こんな格好なんすけど僕、男じゃ...ないんすよね.......。」
思いがけない言葉に皆が驚く。
「.......え?じゃあ、女の子...ってこと.......?」
麗音が言った。
「.......はい。ジェンダーレス女子...って言い方が正しいんすかね.......?家では「女の子らしくしなさい」なんて言われてて、髪も伸ばしてるんすけど...今は帽子の中に閉まってあるんすよね。髪が長かったり、スカートを履いたりする自分に違和感があって。それで、自分らしくない姿で学校に行くとどうしても浮いちゃって。」
ジェンダーレス、という聞き慣れない言葉に皆が不思議そうな顔を浮かべた。
「つまり...、男装してると落ち着くってこと?」
と紅葉が問いかける。
「うーん、男装と纏められることにも違和感を感じてて。一つの個性として「メンズライクなファッションをしている」だけなんすよね。自分が好きなファッションはこういう系統なんで、ロングヘアにスカートの自分だと、どうしても自分に自信が持てないんすよ。」
紅葉の問いに、リクはこう答えた。
「...じゃ、じゃあ、その個性をアイドルとして活かしてみたらどうかな.......?私が普通に話せたのは、リクくんがジェンダーレス女子だったからなんだね。私もアイドルになったリクくんが見てみたい!」
姫梨はリクを強く求めているようだった。
「そう言ってもらえるのはありがたいんすけど...学校って制服っすよね.......?」
と不安そうなリク。
「大丈夫!とりあえず放課後にアイドル部に顔出してみよっ!そういえばリクくん、ほんとの名前はなんていうの?」
麗音が勇気づけた。
「えと...音無鈴...っす。」
リクは自分の本名が「音無鈴」であると告げた。
「鈴ちゃんにリクくん。ダブルフェイスを持つアイドルもアリなんじゃない?」
紅葉の提案にリク以外の全員の目が輝いた。
「わあ...!小説の登場人物みたいで素敵です.......!」
とみどりが言った。
「ロングヘアで歌って踊る僕...想像できないっすけど.......とりあえず、明日学校行ってみます。こんなに曲を気に入ってくれた人達と一緒に活動できるチャンスですから。」
リクの言葉に、一同から「わぁ.......!」と嬉しそうな声が漏れた。
🌻その後の流れ↓
部室には愛実、水葵、ヨゾラが居て、副部長の愛実が大体のことをこなしてる。(部長のヨゾラは寝てたり、もしくは眠そうにしてる)
水葵はおっとりしてて2人の後について行ってるかんじ。
「入部希望者の中に作詞作曲が出来る方はいらっしゃいますか?」
と愛実に問われ一同は鈴の方を見るが、鈴は自信なさげ。
「…どうしても、この格好だと自分に自信が持てなくて.......。」
と鈴は困ったように言う。
じゃあ、と言って手提げ袋を鈴に麗音が差し出す。(中にはキャップとズボンが入ってる)
ボーイッシュになった鈴(リク)
が即興演奏で弾き語りをし、実力が認められて5人は無事入部!
ってかんじの流れ。寺島夢海ちゃんは一番入部が遅くて、理由は実は「MIYU」という名前で芸能活動をしている芸能人だから。芸能活動はコンタクトでしているが、学校では黒縁メガネ。
アイドル部に入ることで芸能活動に支障が出るのでは、と迷っていたが鈴(リク)がいつか楽曲提供をしたいと思っていた憧れのアーティストがMIYUだったと夢海が知り、入部を決意する。
こんなかんじです!
🌙ヨゾラちゃんメインのストーリー
「あれ、君…もしかしてリク.......?」
ギターの女性が、鈴に声をかける。
「.......っ!え…えっと.......その……。」
鈴は明らかに動揺していた。
「一瞬人違いかなって思ったけど…やっぱりそうだったんだ。あの時からずっと気になってたんだけど…うちに来ない?」
「.......!!!」
その言葉に一同は驚いた。
「駄目ですよ。鈴ちゃんもリクくんも、うちの大事な部員です。渡せません。」
愛実がきっぱりと断るが、女性は引かなかった。
「そんなこと言っても、うちのバンドのゲストボーカルであんなにいい歌歌ってくれたのリクくらいだし…作詞作曲もできるんだもんなあ。こっちも引けないな。」
食い下がる女性に、不安そうに鈴は「えぇ.......?」と呟いた。
「リクくんも鈴ちゃんも私たちの大事な仲間だって言ってるじゃないですか…!だめ、です.......!」
その言葉を聞いた姫梨がそう言った。
「でもさあ、君たちアイドルやってるんでしょ?私たちはバンドだけど、知名度は圧倒的にこっちの方が上だ。つまり、リクくんの魅力をより引き出せるのはこっちってこと。わかるわよね?」
その言葉に全員が悔しそうな顔を浮かべる中、ヨゾラがポツリと一言、「…だめ。」と呟く。
「…どうしたの?こっちも引けないって言って.......」
その言葉を遮るように、「……渡さない。」という静かに怒気を孕んだ声が響いた。
「リクも鈴も、私たちの大切な仲間。うちの部活は鈴無しでは成り立たない。それでも奪うっていうなら…どちらが鈴の曲の魅力を引き出せるのか、私が…部長のこの私が、証明する。」
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