罪と罰
椎名林檎/探偵(cv.もる)&社長(cv.もーこ)
罪と罰
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ー 東京林檎第17話 ー
罪と罰 探偵(cv.もる)&社長(cv.もーこ)
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「来ると思っていたよ、ようやく会えたね、社長さん」
自宅に侵入してきた社長にナイフで胸を刺されながら、探偵は軽やかに笑ってみせた。
「答えあわせがしたくて刑事さんに防刃ベストをもらっていたんだ、刺されてるけど、このままお話してもいいかな。君は自分の娘に暴力をふるい、秘書にパワハラを働いていた。そう密告が来たんだが、合ってるかな」
「…そうよ」
探偵は、芝居掛かった口調で続けた。
「君が狂ったのは、高校の同級生に唆されて宗教団体に入った時からだ。娘の教育が上手くいかず、周囲が自分を見下しているように見えた。君は何度か精神科を受診しているね」
「そう」
探偵は口を開けて、大きな欠伸をした。
「…まいったな、眠くなってきた。君、もしかしてこれに毒か何か塗った?」
「ええ、友人のお土産よ。さすがにそのベストでも、かすり傷から入ってくる毒には効かないでしょ」
(人生最後の会話が、自分を殺す人物との問答なんて。最高に俺らしくて笑えるじゃないか)
探偵は、くらくらとした頭で次の質問を考える。
「…じゃあ、二つだけ言わせてくれ。…君は記者を殺してない。…そして、君はこれでも、…娘さんのことを愛しているんだね」
「そうよ。命知らずな探偵さん。好奇心があなたを殺したの」
社長は、悲しい表情で笑った。
そのまま、ゆっくりと瞼を閉じる探偵。
彼が眠りから覚めることは二度となかった。
#東京林檎
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