【ひとり声劇】先生
朗読者:山秋 ピアノ:彗さん 台本:じん
【ひとり声劇】先生
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心にきますね
【先生】
先生。
お久しぶりで御座います。
手紙が書けるようになったのは何日ぶりでしょう。
現地では紙とペンを持たせてはくれぬのです。
皆、弱音を書き綴ってしまうからでしょう。
改めて先生へ手紙を書いている私も、きっと同じような状態なのでしょう。
曜日も日付もなく日が経つばかり。
起床、応急処置、就寝と単調に進んでおります。
これまで百三名の最期を看取ってきました。
死力を尽くしても救えるのはわずか一握りで、ほとんどが私の手から零れ落ちて逝きます。
最近はふと、自分の最期を考えることが多くなりました。
何をするにも無駄な気がして。
前頭葉の脱落症状かもしれません。
先生。
決して救えぬとわかっている仲間に、私は何と声を掛けたらよいのでしょう。
私に一縷の望みをかけて見つめてきます。
軍医は神ではないというのに。
子供のように無邪気だった青年たちの瞳が濁っていく姿を、もう見たくはありません。
先生。
空襲があったと聞きました。
待っていてください。私もすぐに参ります。
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<漢字の読み>
一縷...いちる
<設定>
先生の元を離れた先は、戦場だった。
派遣された当初に感じていた恐怖はなく、心はひどく穏やかだった。
もうこの世にはいない恩師へ手紙を書く。
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