【声劇】むかしのはなし
BGM:いさ様/文章:蒼
【声劇】むかしのはなし
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神社の古い石段には神様が住んでいる
下から数えて十三段目
幼い頃に踏み外した、少しだけ傾いているところ
浮遊感と
嘘みたいに綺麗な木漏れ陽が頭の中にあふれて
目を閉じた
身構えた衝撃がやってくることはなくて
かわりに、やわらかく笑う声が耳元で響いた
“気をつけなければいけないよ
君はまだ、小さいのだからね
さもなければ
お迎えがやってきてしまうだろうよ”
やさしい声だった
ゆっくりと遠ざかる手は温かくて
白い袖から、ふわりと、くちなしの香りがした
それ以来あの石段を上るときはいつも
かすかなくちなしの香りが風に混じるのだ
誰も知らない
僕と、神様だけの秘密だ
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- 蒼#1925
- 十七夜月すき