【小説】②『ストーカー』
AVIneko
【小説】②『ストーカー』
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※こちらはBGM付の小説です。声劇台本ではございません。
※BGMはリピート再生にして頂くのをお勧め致します。
※続き物です。
前回①→https://nana-music.com/sounds/0473c7c8/
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あの写真を見てから、さらに3日が経った。余計に眠れない日々が続くなか、フラフラとした足取りで大学に向かう。
誰にも手紙や写真の事は相談していない。できるわけがない。犯人は私の事はなんでも把握しているんだ。
誰も巻き込むわけにはいかない。被害を受けるのは私だけでじゅうぶんだ。
そう自分に言い聞かせ、校門前に辿り着いた。
「おっはよー! マヤ!」
「ナナ…」
彼女は大学で知り合った親友、ナナ。私とは正反対で、明るく友好的で、サバサバしている。
「いやぁ…レポート大量で寝不足だよ~」
「そうだね…」
「マヤったら、目にクマできちゃってるじゃん。真面目も程々にね? 折角の美人が台無し!」
「も、もう…、ナナったら」
「今日がレポートの提出日だし、今日からグッスリ眠れるよ! そしたらさ、明日はパーッとやろうねっ!」
「うん」
私は精一杯笑顔を作った。
ナナはいつもと変わらぬ笑顔を見せながら、逆方面の教室へ向かい、私たちはそのまま別れた。
大丈夫…私がいつも通りに振る舞っていれば、問題ないんだ‥。いつも通りに…。
*****
1限目の講義。レジュメの内容を解説している先生の声が響く。
ダメだ…全然内容が入ってこない…。目もかすれるし、頭もクラクラする……。
まずい……ここにきて、今までの疲労が……。
「おい、マヤ? 顔色悪いぞ?」
「…ヨシタカ?」
声をかけてきたのは、隣の席に座っていたヨシタカ。大人しい私でも話しやすい数少ない男友達だ。
「具合悪いんじゃねえの? 保健室いくか?」
「え…っ!」
まずい……! 私は慌てて笑顔を作った。
「う、ううん…大丈夫! レポートがいっぱいで、全然寝てなくてさ…」
「……本当に?」
「ほ、本当…っ!」
けれど、勘のいいヨシタカは私が無理しているのがわかったらしい。席を立ち上がったかと思えば、先生の話を遮って声をかける。
「すいません。こいつ、調子悪そうなんで保健室連れていきます」
「え?! ちょ、ちょっと…」
「その状態で横にいられると、俺も集中できねえんだよ。ほら、行くぞ。立てるか?」
「……うん……」
ヨシタカは、私を強引に保健室へと引っ張っていった。
*****
「あれ….、保健の先生いねーじゃん。しゃーねぇなぁ」
「ヨシタカ…私、本当に大したことないよ? もどろ…」
「ぶわーか。そんな土気色の顔してなに言ってんだ。痩せ我慢だけはいっちょ前だな、お前は。とりあえずベッドで横になってればいいだろ。先生が戻ってきたら俺が説明すっから」
「でも…」
「大人しく寝ないと放り込むぞ」
「う……」
こうなると、ヨシタカは頑固だ。ちゃんと私がベッドに入るのを見届けるまで、このままでいるつもりだろう。
「……失礼します」
私が大人しくベッドに入るのを見ると、ヨシタカはカーテンを閉めてくれた。
だけど、眠り方を忘れてしまったか、目を閉じても不安の方が勝ってしまって寝付けなかった。
「……ヨシタカ」
「んー?」
カーテンの向こうからヨシタカの返事が返ってくる。
「ごめんね。迷惑かけちゃって…」
「ぶわーか。俺がやりたいようにやってるだけだ」
「……」
「なんたって、サボれる口実できたからな。都合よく利用させてもらったぜ」
「なによそれ…」
私は少しだけ笑った。ヨシタカの思いやりが嬉しかった。
ヨシタカは、一年生の頃から面倒見がよくて、人見知りの私はたくさん助けてもらっている。
男子を怖がってた私だけど、彼は平気だった。
優しくしてもらう筋合いのないこんな私に、いつも手を差し伸べてくれる。
素行があまりよくない時もあるけど、本当にいい人だ。
「……ありがとう……」
「な、なにが……べつに……」
けど、素直にお礼を言われると照れるらしい。
「…………」
あの写真のコピーの中には、ヨシタカとナナの写真も混じっていた。
私がもし誰かに相談なんかしたら…ヨシタカとナナは…
恐怖が混み上がって涙が滲み出た、その時だった。
ピルルルッ!!
「?!」
スマホのけたたましい着信音が突然鳴り響き、私の心臓は大きく飛び跳ねた。
ポケットの中のスマホが鳴っている……っ!?
私はスマホを取り出し、画面を見た。
そこには、《非通知》の表記が。
「……っ!」
もしかして……っ!
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次回③→https://nana-music.com/sounds/04740467/
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