【朗読台本】水溶性 氷温貯蔵庫
はっぱ
【朗読台本】水溶性 氷温貯蔵庫
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卯木さんの素敵な台本お借りしました( ´﹀` )
《セリフ》
「ぁ、……ふ」
紡ぐ音すら声にならず
言葉のなり損なったような息が
少し漏れた、気がした
文字は水に溶けた
音は雪に埋もれ、
声は雨に流されていった
「っふふ、ふ」
笑い声はどこからあがるのだろうか
それが自分のものなのかすら分からない
ただ 切り取られた空間の
そこかしこに共鳴するのだ
歩く度にきん、きんと氷のぶつかる音がする
氷と 氷のぶつかる音だ
これはわたしのあしではない
冷たいのと 無機質なのが 触れ合うだけ
ひゅう、紡がれなかった言葉は
吠えるような鋭さのまま 呆気なく転げていった
「これを零度と呼ぶの?
それは 些かつまらない…そうね?」
希釈、希釈、存在の撹拌
すべてを取り去って何が残るか
まさか考えなかったとでも言うのか
ここで動きを止めたら どうなるだろうか
「ふふ、なんにもないのに
なんでかしら おかしくてたまらない 」
ぱき、 かちりと 響いた音の影に
生まれ落ちたのは水晶だった
なにもない。なんとなく全て水溶性だと伺える
その世界で 滲まず残るものは あるのだろうか
#卯木の台本
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