「夏の病院」
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「夏の病院」
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BGMお借りしました。
昼間にも関わらず
青白い蛍光灯が照らす建物の中は
存外に消毒液の匂いはしなかった
カーテンの隙間から覗く
暑苦しい夏の日差しが
自分を部屋に
入れてくれないことを
責めているみたいで
滑稽だった
対してこの古い院内の廊下は
じっとりと蒸し暑さを滲ませながらも
ひんやりと静まり返っていて
どんなに健康な人間でも
病気になってしまいそうな
そんな様相だった
まるで死が廊下のあちこちで
へばりついてその機会を
伺っているかのような
いやらしい陰鬱さを携えて
ちょうど視界がモノクロフィルムのように色素を失っていくのに気付いたとき
あの人の病室の番号を見つけた
あの人を前にしたら
見舞いに来たはずの人間は
急に覇気をなくして
棒立ちになってベッドに座る彼を囲んだ
もうとっくに私達は死の圧力に
押しつぶされてしまったのだ
まるでこちらが病人だった
壁に張りついて
その機会を伺っている
「終末」とやらに
無言の抵抗をするため
私は息を止めたまま俯き
床の一点を睨みつけるだけで
精一杯だった
聴いてくれた方お粗末様です。。
Comment
2commnets
- すきやき
- TAKA瞼を閉じて耳を澄ますと情景が浮かんできます👀 こちらはすきやきさんの自作でしょうか? 叙情的な詩でした👏👏👏パチパチパチパチ