台本『スーサイドヒーロー』

台本:KEY 朗読:

#BGM 台本45個目。身を潰し、削って今日も彼は死ぬ。 今回は、ヒーローの傍らジレンマに苦しむドクターが主人公。作中の考え方ですが、「テセウスの船」という同一性を問う思考実験です。彼はずっと彼のままでしょうが、本当に一般人としての彼は生きているのか。そんなお話。 女性でも男性でも通る言い回しになってると思います。口調のアレンジ等したい方はどうぞ。 BGMはゆずちゃ様より「ザナルカンドにて（FF10)」をお借りしました。ありがとうございました！ 結構ギリギリになるかもしれません…。 それでは、よろしくお願い致します。 —————————ここから台本————————— 「本当に君という人間は…。私の心配が如何程（いかほど）か、考えたことなどないだろう！？」 そんな私の剣幕に、男はすまなさそうに頭を掻いて答える。 私がチューンナップした鉄腕を嬉しそうに眺めるその顔は、何処（どこ）にでもいる好青年そのものだった。 「君は事の重大さをわかっちゃいない。私は遠からず、君が死んでしまうと言っているんだ…。」 ドクターがいるから大丈夫、なんて笑ってくれるな。これはそういう問題じゃない。 「サイボーグ化とは置き換えなんだよ。既に両足右腕眼球は置換済み。更にどこかを換えたとして、そいつはもう君と言えるのか？まだ間に合う。今ならまだ引き返せるんだよ…！」 あぁしかし、私が必死に言い募ろう（つのろう）と、それでも彼がヒーローであるならば。 彼はここで終わらない。 彼は噂のサイボーグヒーロー。 人を救う事こそが、存在意義だと言うあの男を、私は皮肉を込めてこう呼ぼう。 「自分も救ってこそだろう、スーサイドヒーロー。」