【声劇】とある罪の数え方【台本】
あーの
【声劇】とある罪の数え方【台本】
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お借りしました~!!!
【台本】
先客がいた。
二十歳(ハタチ)も半ば過ぎほどの男性が1人。
無造作な黒髪に、酷くやつれた顔つき。
生きているのか定かではない、汚れた瞳。
零される低めの声に思わず世界が歪んだ気がした。
「絶景だと思わないか?」
気狂いの類かと思った。
自殺の名所として有名なこの場所は、お世辞にも綺麗と思えるものは何一つとしてない。
ただ雲を重たくぶら下げた空と飛び降りれば死ねる高さの崖だけが目の奥に映るだけ。
男の言葉に「いいえ」と答える。
「君は聞こえるかい?」
「何がですか」
「心臓の音」
誰の心臓の音だろう。
どちらの、心臓の音だろう。
ドクンドクン、と意識した途端に聞こえた気がした。それは紛うことなき自分の音だ。
「死ぬ覚悟で来ました」
そう呟くと、何だか少し怖くなった。
死ぬ為に覚悟しなきゃいけないのが、変な気もした。
「私は物書きをやっているんだ。
君が命を捨てるなら、少しの間貸してくれないかい?」
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