十円玉
台本:相良和沙 読み手:
十円玉
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素敵なBGMお借りしました
アレンジアドリブOKです
一人称などご自由に
─昭和の日記─
近所の駄菓子屋に、
ふと足を向けたときの出来事。
握りしめていたであろう十円玉は、足元で
ちいさくひかっていました。
↓↓台本↓↓
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十円玉を拾った。
楽しみに走って来たであろう子供が、これを落としてしまっては…。
駄菓子屋の前にある、堀に落ちた十円玉は、汚く汚れてしまっていた。
私はそれを、近くにあった水道の水で洗い流してみた。
「それ、落ちてましたか」
振り向けば、駄菓子屋の店番であろう婆様が私を見つめている。
「可哀想に、買えなかったんでしょうね。渡してやってください」
私は濡れた十円玉をハンカチで拭って婆様に渡した。
すると婆様はくしゃ、と音のなるような笑顔で、
「誰か親切な人が見つけてくださるから、気にしなくていいのよって伝えたばかりです。神様は私たちを見ていらっしゃる。ほんの気持ちですが、どうぞ」
私にキャラメルを一つ差し出した。
少し溶けていたそれは、懐かしい味がする。
子供を見つめる目が合って、育てる人間がいる。
私の世界は、身近な所で優しさに溢れていた。
舌の上でいつの間にか無くなっていたキャラメルは、微(かす)かに香りを漂(ただよ)わせながら、私の心に消えていった。
夜の匂いが近付いている。
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