【朗読台本】長き月、夜と刹那

神城 昇

この世界観好きです笑 ーーー いやぁ、秋とはまことに美しくありますね、 深い紅葉(ｸﾚﾊ)のような 紅(ﾍﾞﾆ)の なんと お綺麗なこと。 口の端(ｸﾁﾉﾊ)に尖った白いのが見えますから 美しくも恐ろしいのですけれど。 やっぱり、美しい。 そう言ったら その方はたいそう お優しい笑みを浮かべ 云うのです。 「お前、いやに熱っぽく この鬼を見るじゃあないか。」と、 からかうような、幼子(ｵｻﾅｺﾞ)にするような 柔らかな物言いでした。 たくさんの異形(ｲｷﾞｮｳ)のものたちを 愉快そうに従える、その漫然(ﾏﾝｾﾞﾝ)たるお姿で きわめて穏やかに すうと秋の息を吹くのです。 わたくしは思わず、 近くに生えていた芒(ｽｽｷ)をむしり 鬼の鼻先にぐいと突き出しました。 けれど 芒のふわふわとした 薄白に誤魔化される訳もなく 鮮やかな秋が ただ間近で はっきりと色を濃くしていました。 #四ノ宮りゐオリジナル #卯木の台本 #拍手返します