──後任審神者の就任から四ヶ月。八月の中旬。
それぞれ思う心を抱えながらなんとか本丸の運営を勧めてきた、とある日。
「──審神者さん!!」
執務室へと前田藤四郎が飛び込んできた。顔面蒼白の中、彼は青年に手入れ部屋へと来て欲しいと頼んでは手を引いた。
「ぇ、ええ?」
「大典太さんが……!」
手入れ部屋へと飛び込んだ青年の目に飛び込んだのは、重症になった大典太の姿だった。
「……どうして。大典太さんの出陣は今日無かったのに、」
「ひとりで、出陣してしまったんです、厚樫山に、止めるソハヤさんの言葉も聞かずに……!!」
「なんで……!?」
「──ぁ、るじ、が、もどって、こないなら……おれた、ほうが、ましだ、」
言葉を紡ぐこともままならない彼の口から零れたのは、青年の胸を簡単に刺した。
厚樫山へと単騎出陣した大典太は、手入れ部屋で一夜を明かしながらその頬を涙で濡らし続けるだけだった。
「……話すべき、でも、約束を無碍に出来ないよ。どうしよう、……どうしよう、姉ちゃん。ねえ、……俺、どうしたらいいんだろう……?姉ちゃんの声が聞こえないのに、俺、やっていける気がしないよ、ねえ、」
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