【朗読】台風と涙のゆくえ【9月】
シュウ
【朗読】台風と涙のゆくえ【9月】
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君が転校生としてこの街にやってきたのは
厳しい残暑がまだ猛威を振るっていた
9月だった。
何十年かに一度の
大型の台風が日本列島を縦断する。
そんなニュースが流れていたあの日。
君はなぜか
街外れの灯台へ行きたいと言った。
そこに何があるのか。
当時の僕には分からなかった。
ただ、君の願いを叶えたい。
その一心で
僕は君の手を引いて
風を避けて歩いた。
熱気と共に
雨と雷と、夏の思い出が吹き荒れていた。
あの灯台の暗闇の中で
僕と君はお互いに背中をあずけ
ただ黙って、座っていた。
震える背中で
君が泣いているのが分かった。
理由を尋ねるのがこわくて
僕は黙ったまま、君の哀しみを想った。
台風が過ぎ去ったのは早朝で
僕たちは渦ような雲間から
太陽が昇っていくのを並んで見ていた。
君の涙はもう乾いていた。
「ありがとう」
そう言って、君は笑った。
#声劇 #朗読 #台本
Comment
1commnets
- シュウ風夏さん、ありがとうございます。 前垢のコラボしてくださったんですね(^o^)すっごく嬉しいです。聴きに伺いますね!フォローもありがとうございます!