色のない世界から【一人声劇】

(お名前)

閉ざされた扉は開かない。 ＊＊＊ 色のない世界。冷たい世界。それが、私のすべてだった。 何も無い、ただ時が過ぎゆくだけの毎日。 異端な紅い瞳、それが私を縛る鎖の名前だ。 命がもう、いくばくもないことは知っていた。18歳の誕生日、私は国王であるお父様に殺される。 でも怖くはなかった。死んだように生きて、それがただ、終わるだけ。 そう、＿＿今までと、何も変わらないのだから。 でもひとつだけ。ひとつだけ、心残りがあった。 それは、外の世界を知ることが出来ないままに短い生を終えることだった。 吹きわたる爽やかな風も、打ち寄せる波の音も、流れ落ちる雨の雫でさえも、私は知らずに死んでいくのだ。 ……本当は、死にたくなんてなかった。 満天の星空を見たかった。彼方まで広がる地平線を、そして沈みゆく夕陽を見たかった。銀色に輝く雪原を、咲き乱れる花々を、燃えるような紅葉を見たかった。 美しい世界を、生きてみたかった。 …ああ、それでも。 それでも、それが叶わないことを、私は知っている。 ＊＊＊ それは、幾度となく夢見る世界。 とある少女のお話。 そうして彼女は、18歳へのカウントダウンを静かに始める。絶望も、哀しみもなく、ただ淡々と。 https://nana-music.com/sounds/040fca35/ これの前日譚。 #灰宮しゃるの台本 #声劇台本 #台本