#宝物なあなたの欠片
!!刀剣破壊描写・死ネタ・微夢・独自解釈注意!!
***
「今年も、花火見たかったね」
去年の夜も、こんなに寒かったかな。
縁側で本丸のみんなと見た打上花火。
黒いキャンパスに滴る赤の火花を、戦場に散る血潮のようだと言ったのは彼だ。ずっと誰よりも一番大切だった彼。
私は。
私は、彼の死に際さえ見れなかったのだ。
先日戦場に送り出した彼は、変わり果てた欠片となって戻ってきた。私が彼にお守りを渡し忘れたまま、誤った戦場へ送ってしまったせいで。そして敵の攻撃を受けたその瞬間、彼は。
パッと光って。
咲いて。
消えてしまった。
ごめんね。ごめんね。
私はただただ甘かった。貴方達といることが楽しすぎて、ここが戦場であることを少しも理解できていなかったのだ。
打上花火が咲いた。
そして、海に溢れて行く。赤い血潮が溶けていく。
ゆっくりと前に進むと、体はますます黒い海中へ沈み込んだ。押し戻す波に逆らい、膝下にあった水面は首の方まで冷たくしていく。しかし、いくら歩いても、決してその光まで辿り着かない。
打上花火が咲いた。
パッと光って。
あとはただの静寂だ。
「薬研」
離れないで。彼の名を呟いて一歩進むと、体が傾く。
ーーーーー。
真っ逆さま。
私は漸く足場の無くなった海の中に、大切な欠片と共に溶けていった。
***
薬研藤四郎 破壊
死因: 戦死
審神者: 行方不明
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