【朗読台本】いきとし、いとし
残夜
【朗読台本】いきとし、いとし
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本当に美しい世界観をもった台本に出会ってしまいました
どうしても触れてみたくなりました
私の声が微力でも伝えてみたくなりました…ぜひ。
#卯木の台本 #朗読
絡め取られて 攫われてしまったのだ
深くて甘い 夢の奥底へと
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心は夢を見ている
微睡むように ゆったりと動けなくなる
甘くむせかえる藤の香り くゆる薄紫
指先からじわじわと痺れてゆく
莢を裂いて 種を食んで 毒の回るを
夢のように眺めている
心は夢を見ている そう傍観している
ふらりはらり、ちるちると
融けるように 重なり 連なる花弁
睫毛にぱさぱさと
金の粉が被っているのに気付いて
なるほど 先程から
視界を暈すのはこの花粉であろうかと
そこでようやく
自分を惑わすものの正体を知るのだ
するり しろい腕が 頬を、目元を、撫でた
髪を梳くって
噎せるような甘さを擦り付ける
「夢のせいにして 攫われてみてはくれまいか」
そうして、くしゃり さりり と
藤の花が煙のように
私の身体ごと 夢で覆ってしまった
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Comment
2commnets
- 残夜
- 卯木さゐくご使用ありがとうございます。優しいお声! ひとつひとつ確かめるような ふわふわとした重さのないような そんな世界がとても素敵でした。まさに夢心地!覆ってしまった、の言い方で、あぁきちんと世界が閉じたな という終わり方がしていて、とても美しかったです。読んでくださってありがとうございました!!