星風
西の関/卯ノ花春
星風
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―― 風が、吹いている。
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未だ以前の合戦の名残が消えない我が陣にて。浅い夢にいざなわれ辿り着いた此処で、わたしは神様に名を賜った。それと、力も。
「式……、式神……ね」
式神。識神、とも名を変えるその概念は、遥か昔、陰陽師である安倍晴明に仕えた、十二天将が一番有名だろうか。陰陽道を司る者、陰陽師が使役する鬼神。それが式神。一説では善悪を見極めるとも言うが、その話は隅に置いておく。
西の関のはずれ、一等新参者のわたしが楽しげな話し声に混ざることはなく、ただ遠くから、陣の旗を見ている。
「ねえ」
ふ、と、透き通る男の声が聞こえた。そろりと目を回すと、そこには、やはり男が居た。秀麗な青年だ。生まれた時から代わり映えのないわたしの黒髪と違い、青年は銀髪。わたしの黒とは違う、彼の瞳の、色素が薄い青。わたしがセミロングなのに対して、青年はほど長いロングヘアだし、それを低い位置でひとつに結んでいるのだから、……正直見蕩れている。わたしは美人な青年が好きだ。
「ふふ。主様は面白いね、……食べたくなるから、あまりそう言うことは思わないように……なんて」
「あるじ……、君やっぱり、わたしの、……」
「うん、そうさ。僕は君の式。あなたの式。でも、この存在は戦神様に与えられたものであって……。まだ不安定なんだよね。だから、名前を頂戴、主様。名前を呼んで。そうすればきっと、僕は君の力になれる」
銀髪を揺らした青年――わたしの、式。緩やかな風が吹いていることに気付いて、開花させて頂いた才能が風のものだと思い出す。柔らかな――時の如く――星の砂時計……、そういえば、そう称されていたのだっけ。
「星砂(せいさ)。君の名前は、星砂」
「……素敵な、名前だ……。君の字と同じように、可憐で、流麗で、……。」
「……星砂?」
「ふふ、改めて。卯ノ花春の式、星砂なる字を主より賜る。これより僕は、正式にあなたの式になる」
星砂がそう宣った瞬間、刹那。わたしと星砂を中心に、小さな風が吹き荒れた。
「わ、っ……何これ……!」
「祝福しているのさ、主様。卯ノ花春様。春様。……これから、宜しくね」
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―― 風が、吹いている
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#鑑賞
#BGM
#青オリジナル
#ツワモノ達が夢の中
Comment
8commnets
- 𝘏𝘢𝘫𝘪𝘮𝘦 𝘚𝘩𝘪𝘰𝘯𝘰確認と返信が遅くなりまして、申し訳ありません😭 西の関、星の砂時計という名を頂きました卯ノ花春です。 光栄です……!🙏星砂と、関ヶ原での「わたし」を、何卒宜しくお願い致します。交流ですか😲💦勿論です~!「わたし」も星砂も、基本的にはフリーに使って頂いて構わないです。何か質問等ありましたらお気軽にどうぞ🙌
- 𝘏𝘢𝘫𝘪𝘮𝘦 𝘚𝘩𝘪𝘰𝘯𝘰
- くらげ
- 𝘏𝘢𝘫𝘪𝘮𝘦 𝘚𝘩𝘪𝘰𝘯𝘰
- くらげ
- 𝘏𝘢𝘫𝘪𝘮𝘦 𝘚𝘩𝘪𝘰𝘯𝘰
- くらげンンン西の新入り仲良くして給う……
- 𝘏𝘢𝘫𝘪𝘮𝘦 𝘚𝘩𝘪𝘰𝘯𝘰第三章からの初めましてですが、何卒。