【声劇】とある罪の数え方 其ノ肆【台本】
声劇して下さった方のお名前をどうぞ。
【声劇】とある罪の数え方 其ノ肆【台本】
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素敵過ぎて一気に読んでしまいました、ありがとうございます。
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【台本】
湯気が支配する大釜の中には、豆腐。
歪(イガミ)なその角に沸騰した水の粒が当たって砕けた。
その中身を眺めていると後頭部を突かれる。
「畠山(ハタケヤマ)」
「よぉ、化野大先生。執筆活動は順調か?」
「嫌味のつもりかい?
残念ながら、依頼原稿の一枚目に埃が積もってるよ」
私の言葉を聞くと畠山は愉快に笑った。
それから満足したのか、私の顔をひょいと見てから「何かいい事でもあったのか?」と問う。心当たりは一つしか無かった。
「猫を拾ってね」
「猫ぉ? なんでまた、そんな希代(キタイ)なもの」
「……室生(ムロオ)然(シカ)り谷崎然り、ヘミングウェイ然り。
著名(チョメイ)な作家は猫を愛(メ)でるものなんだよ」
「…著名、ねぇ?」
何か言いたげな畠山を他所(ヨソ)に、豆腐屋の店主に二丁目の豆腐を頼む。白湯(サユ)に浮かぶ豆腐が仲良く小鍋の中に並ぶ。
「二丁って…最近は猫も豆腐を食うのか?」
「さぁ?
好物を聞いてくるのを忘れてしまったからね。
じゃあ、畠山。私は豆腐が冷めないうちに戻るよ。豆腐代、六文(ロクモン)立替(タテカエ)といてくれ。」
文句を言う畠山の言葉から逃げる様に、私は帰路(キロ)を辿った。
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