冬の夜空が綺麗だった。
オヤスミセカイ
冬の夜空が綺麗だった。
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#オヤスミセカイの物語
オリオンがベテルギウスの部隊に配属されてもう何ヶ月たっただろう。冬の荒地での戦いが起こった時だった。部隊は無事に勝利したが多くの犠牲者が出た。見晴らしのいい場所で大きく仰向けに寝転ぶベテルギウスの元に、オリオンがやってきた。
「オリオン?どうした?」
「お隣よろしいでしょうか、大佐」
「あ、あぁ、構わない」
「失礼いたします。」
ベテルギウスは夜空を眺めていた。戦いの後、よく1人で眺めていた。それはそれは綺麗な星々を眺めることで、自分は間違っていないだろうか、いつまで戦いは続くのだろうか、そんな不安な気持ちを整理しているのだ。そこへ彼女が自らの意思なのだろうか?歩み寄ってきたことにベテルギウスは驚き少し嬉しい気持ちになった。
「オリオンは星は好きか?」
「いえ、特には」
「そうだと思った、じゃあどうだ、今眺めている夜空は」
「…どうといいますと?」
「綺麗だと思わないか?」
「確かに、ただ真っ暗で何もないものよりも、小さく無数に輝くものは、いいものなのでは、ないでしょうか?それが綺麗だと言うのであれば、私も綺麗だと思います」
「相変わらずだな、お前は」
「?」
ベテルギウスは優しく笑い、夜空を指差し話始めた。
「オリオン座、あの3つ明るく横並びの星達を目印になりたっている星座だ。オリオン、お前の名前と一緒なんだ。初めて会った時にいい名前だなと話したことを覚えているか?俺は昔から夜空を眺めるのが好きでな。いろーーんな事があるこの現実から少し、俺を遠ざけてくれるような力があの綺麗な星々を眺めることで感じてしまってな。時間を作っては星の勉強だってするぐらいになってしまったんだ。だから俺の好きな星や星座の名前が、こんな身近にいる存在と同じだなんて、それはそれは美しく幸せなことだなぁと思ってしまったんだよ。」
話しながらふとベテルギウスは彼女をみた。緑の瞳が真っ直ぐ夜空を見つめている。瞳の中に無数の星が写っていた。
「私は美しくはありません、綺麗でもありません。」
オリオンが口を開く。ベテルギウスはどうしてそう思うと質問を返した。少し間が空き再び彼女が話し出す。
「私はこの国に生まれ物心ついたころにはもう、戦うことを覚えておりそれ以外に生きる価値がないと思っております。戦いに出向き、多くの人を殺めてまいりました。多くの犠牲者を出しました。多くの仲間を失いました。それでも私には戦いしかないのです。この両手で、両足で、私は戦っているのです。こんな私は何もないただ空っぽの人間であり兵器であり、あのような輝く星々のように、大佐を癒したり誰かの励みになるようなことは出来ません。私はあのオリオンとは違うのです。」
「大佐、何かを綺麗だとか、何かを好きだと思う、それはどうしたら分かるのですか?」
何も知らない彼女をベテルギウスは優しく抱きしめた。
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