【一人声劇台本】 魚服記
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【一人声劇台本】 魚服記
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太宰治の魚服記の一部です。
学生はこの絶壁によじのぼった。
昼過ぎのことであったが、初秋の日ざしはまだ絶壁の頂上に明るく残っていた。
学生が、絶壁のなかばに到達した時、足だまりにしていた頭ほどの石ころがもろく崩れた。
崖から剥ぎ取られたようにすっと落ちた。
途中で絶壁の老樹の枝にひっかかった。
枝が折れた。
すさまじい音をたてて淵へたたきこまれた。
滝の付近に居合わせた四、五人がそれを目撃した。
しかし、淵のそばの茶店にいる十五になる女の子が一番はっきりとそれを見た。
いちど、滝壺をふかく沈められて、それから、すらっと上半身が水面から躍りあがった。眼をつぶって口を小さくあけていた。
青色のシャツのところどころが破れて、採集かばんがまだ肩にかかっていた。
それきりまたぐっと水底へ引きずり込まれたのである。
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