【台本】晴れは似合わない

台本：グリリ

昔書いた小説を無理くり90秒に圧縮したシリーズ。 一人でも、掛け合いでも、お好きに自由に。 これ90秒で読めるかな…( ˙-˙ ) ・登場人物 美月（みづき） 音葉（おとは） セリフ以外の文は全て美月視点です。 以下台本↓ 「忙しそうねスマホ」 「ん？ うん」 　仕事の昼休みのビル屋上。横でずっとスマホをいじっている音葉のスマホにはスカーフをまいた小さな熊のぬいぐるみがついている。私が音葉にあげたものだ。 　音葉は間が抜けてて、わりと嘘つきな女の子だ。 「ゆうき君？」 「え、あ、うん。そ、そうなの。返事がね、返ってこないの」 ゆうき君は音葉の彼氏だ。 「おと、何かしたんじゃない？」 「えー、みづき、ひどーい！」 　私達は笑い合う。 「ヒーローベア、大事にしてくれてありがとね」 「え？ ああ、うん」 　上には平和な青空が広がってる。 「あのさ、来週の土曜空いてる？　買い物行こうよ」 「あ…来週はごめん。先約あり」 「そ。んーじゃあ、その次の日曜」 「ごめん、そこも駄目。みづき、あたしの予定あるとこばっか狙い撃ちだね」 　晴れ。 「うん、狙った」 　 青空。 ――晴れてんじゃねえよ。 「だって両方とも、信也とデートに行くんだもんね」 　音葉の空気が固まった。 　――ホント、分かり易い女。 「全部知ってるよ。あんたにあげたヒーローベアが、全部教えてくれたから」 「へ……え、みづ――」 小さくても、盗聴の精度は十分だった。 「人の彼氏とってんじゃねえよ」 　こいつは割と、嘘つきだ。 「あ、もう時間だ」 　昼休みが終わる。 「それとさ、あんたがさっきからずっと待ってる信也の返事、待っても無駄よ」 「……え？」 　ーーこんな日に、晴れは似合わないね。 　雨でずくずくになって、ぐしゃぐしゃになって絶望する音葉がそこにいない事だけが残念だ。 「信也、もういないから」