音の街第5話②「喧嘩」
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音の街第5話②「喧嘩」
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人が来ない。その不安が、他者への不信感に繋がり、ネロにあたってしまった。
(平日に全然人の来ないレストランに、思い通りにさせてくれない店主に、きっときみは愛想を尽かすんだろう?)
そんな自分勝手な思いが、彼を撥ね付けてしまった。ネロの言葉は、本当にもっともなものであった。
(ネロに対して、僕はだいぶ冷たくしていたかもしれない。一人に慣れていたから、一緒に暮らす人をどう扱えばよいのかわからなかったんだ…。君に甘えていたよ。)
何か言わないと空気は沈む一方なのに、そんな勝手な言い訳ばかり浮かんでしまい、僕は少し目を伏せた。…その重たい空気に耐え切れなかった彼は、困ったように微笑んだ。
「ごめんね、言いすぎた。ちょっと外で、お店の宣伝をしてくるよ!」
そう作り笑いをした彼は、この店を出て外へいってしまった。
僕はただ、遠のく背中を見送ることしかできない。
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