音の街第5話①『喧嘩』
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音の街第5話①『喧嘩』
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ギクシャクしたまま、お店は開く。昨日のように忙しくお店の時間を過ごせば、わだかまりもなくなるだろう。そう思っていた僕たちだが、今日は平日だった。
「…」
「……」
客が、全く来ない…。
悠くんは、ひたすら無言でメニューと睨めっこをしている。手持ちぶさたな僕は、とてもきまずい。
「ゆ、悠くんー」
「…なんですか」
「な、何してるのかなーなんて…」
「メニューの材料費と値段の改善を考えているんです。誰かさんが、全部食べ切っちゃいそうですから」
つんとした物言いで返す彼は、彼らしくないように思えた。しかし、お腹のすいて余裕のない僕は、広い心で返せない。
「…どうしてっ、そんなこというわけ? 悠くんってさ、僕がここにいるって決めた途端に、結構冷たくなったよね」
…僕はただ、このわだかまりを解消したかっただけだったはずだったのに。
僕らの空気は一層、剣呑なものになった。
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