【2人用声劇】ひぐらしの鳴き声、海の向こう
BGMゆゆ様、シャトーブリアン様
【2人用声劇】ひぐらしの鳴き声、海の向こう
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彼は、海が好きだった。
海から生まれてきたような男だった。
そして彼は、海に帰って行った。
あれは、夏休みで海水浴に行った日の出来事だ。突然の高潮に飲まれた彼は、そのまま帰らぬ人となった。
ひぐらしが鳴いている。
この時期になると、私は彼を思い出す。
ひぐらしが鳴く学校の裏庭で、彼に告白した懐かしくも淡い思い出と焦燥を、同時に胸に響かせてながら。
でも、唐突に彼は帰って来るようになった。
この時期にだけ、海を越えて。
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女「ひぐらしが鳴いてる」
男「光陰に関守なし(こういんにせきもりなし)。時は止まる(とどまる)ことを知らず、小川にぽつねんと流れる草舟のようだな。あっという間に、時は流れる」
女「うわ!びっくりした…出て来る時は、一言ってよ」
男「ひぐらしの鳴き声は良い。何故こんなにも詩的で、切なげ何だろうな」
女「さあ、知らないな。ひぐらしに聞いたら?」
男「同じこと言ってる」
女「え?」
男「学生の頃、君はこの問いに対して同じ事言っていた」
女「よく覚えてるわね」
男「覚えているさ。君は何も変わっていないよ」
女「馬鹿にしてる?」
男「いや、褒め言葉だよ。君は本当に、あの頃のままだ」
女「でも、私は歳をとるんだよ。貴方と違ってね。…最近ね、よく夢を見るの。貴方が海の底にゆっくりと、沈んでいく夢を」
男「でも、俺は今年もこうして、此処にいる」
女「ねえ、来年もまた、会いに来てくれる?」
男「勿論さ、ひぐらしの鳴き声を目印に、海を越えて君に会いに行く」
女「…ありがとう、今年も一緒に海水浴、行こうね」
ひぐらしが鳴いている…と感傷に浸りつつ、こんな台本になりました。男女逆転、または親友として。自由に演じて頂けたなら幸いです。
#台本 #声劇 #2人用声劇
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