朗読「霖雨」

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------------------------- 青、紫、時々ピンク。露に濡れる紫陽花(あじさい)。 空は鈍色(にびいろ)。厚い雲が本来の爽やかな色を覆い隠している。 足下には水溜まり。歪んだり剥がれたりしているコンクリートの上で、降る雫を弾いている。その音がうるさくて、靴に染み込むのも無視して踏みつければ、私がさしている傘の色を映して真っ黒になった。 黒い車。冷たい風を運ぶ。寒くて肩を竦(すく)める。吐(は)いた息が白い。 あなたがいない。 私は傘をさすのが下手くそで、しっかり持っているつもりでも必ず肩や髪がぐっしょり濡れていた。 そんな時、決まって私を傘に入れてくれるのがあなたで、あなたは笑って子どもみたいだと私の濡れた後ろ髪を撫でた。 そっと、自分で後ろ髪を撫でてみる。しっとりと濡れている。 今度は左肩を見てみる。傘を持つ反対側は、服の色が濃くなるほど濡れていた。 傘をさすのをやめてみた。頬を伝う何か。 ああ、あなた。死んでしまったのね。 ------------------------- 6月21日の東京は大雨でした。 その雨の中を歩いている時にふと思い立った声劇です。 雨という単語は使わないというルールを勝手に決めて作りました。まあタイトルは雨そのものなんですけど。ちなみに長雨と同じ意味で、何日も降り続く雨のことらしいです。りんう、と読むそうな。 いつも通り、アドリブアレンジ、はたまた性別転換おーるおっけ。 ただ、結構詰め詰めなので苦しくなるかもしれない。 “あなた”については、友達でも恋人でも家族でも(家族にあなたは使わない？いや夫てことで！)、ご自由に想像してください。 #朗読 #台本 #きへんの台本 #BGM #オリジナル #作曲 #ピアノ #オリジナル曲 #雨 #水 #自然音 #フリーBGM 追記 6月24日 もちろん何の因果関係もありませんが、私がこれを書いた翌日に小林麻央さんが亡くなられたそうです。 私は不治の病に冒されているわけではないし、愛する人を置いて先立つ予定も当分ないです。なので、どうしても置いてかれてしまった市川海老蔵さんやそのお子さんたちの立場になって考えてしまうのですが、やっぱり覚悟はしていても苦しいことだろうと思います。何の実感もなくただ、もう死んでしまったのだと無理矢理にでも受け止めて、それでふとした時にもういないのかと、何度もそんな思いを繰り返すんです。 まあ私は私の大切な子が亡くなった時、その息を引き取る瞬間を見ていなかったし、ただその亡骸を見ただけなので余計そう感じたのかもしれませんけれど。 何にせよ、いずれまたテレビで見かける日が来るだろうと無意識に考えていた中での訃報、非常に残念なことです。ご冥福をお祈りいたします。