本編第1話④
囚われの少女
本編第1話④
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#幻想月華 #声劇 #和風 #イヤホンヘッドフォン推奨
皆様お久しぶりです。
とうとう第1話の〆となる幻想月華第1話④公開です!
今回は新たな登場キャラが何人もいますね…謎のキャラクターもいるようで…?(ΦωΦ)フフフ・・
幻想月華は6月28日で一周年を迎えます。
記念ラジオにて企画をいくつか紹介する予定ですのでお楽しみに(*´`)♡
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《本編1話④〜囚われの少女〜》
[時雨]「いやっほーぅ!!」
満月がぼんやりと辺りを照らす中、四本足の黒い物体がとある屋敷の窓からものすごい勢いで飛び出した。
ブワァッと思いきり風を受けながら空を駆ける。
その上に乗っかっていた真白は、今まで感じたことのない風や見たことがなかった自分の住む村に興奮を隠しきれず叫んだ。
[真白]「すっごい! 飛んでるー!」
[村雨]「ちょ、時雨様速すぎますってぇ!」
真白が叫ぶのとほぼ同時に、真白の隣に全力でしがみついていた少年が青ざめながら悲鳴をあげた。
少年というより青年に近い顔立ちをしているが、怯えきっている彼を見ていると少年という表現の方が合っている気がする。
[時雨]「うるさいなぁもう……」
時雨は、それを横目にため息をつきつつ、空を高速で移動する黒い巨大な亀を珍しそうにペタペタ触っている真白に説明する。
[時雨]「これは式神。うるさいのは村雨っていって、ぼくの付き人だよ」
と、その時、ちょうど時雨たちが飛んでいる真下で爆発が起きた。
[村雨]「っ! また爆発が!」
その衝撃でガクンッと式神がバランスを崩す。
しがみついていた村雨と式神を操縦していた時雨はなんとか耐えたが、ただ乗っかっていただけの真白は……
[真白]「──ひっ、きゃああああ!?」
[時雨]「真白!」
コマのようにくるくる回りながら、木がうっそうと覆い茂る暗い森の中に吸い込まれるように落下していく。
式神のバランスを整えながら真白が落下した方向へ目を向ける時雨。
……と、時雨の視界が白い人影を捉えた。
[時雨]「!? あいつは……」
[村雨]「俺が行きます!」
[時雨]「待て村雨!!」
思わず飛び出そうとした村雨を、腕を掴んで引き止める。
[村雨]「なんで……ってあれは、糸?」
よくよく見ると、真白が落ちた森全体を囲うように透明な糸が蜘蛛の巣の如くびっしりと張り巡らされていた。
[時雨]「結界だ、くそっ!」
と、悔しげに吐き捨てた時雨は、今日が満月で本当に幸運だったと思った。
もし今日が新月で、結界が張られていることに気づかずそのまま突っ込んでいたなら、結界にぶつかって怪我を負うだけでなく糸にかけられている何かしらの妖術に囚われたとしてもおかしくなかっただろう。
[村雨]「じゃあ真白様は……」
[時雨]「……多分大丈夫、『あいつ』がいた。……様子を見よう」
結界が張られているとわかってもなお飛び出そうと森を見つめていた村雨は、『あいつ』とは誰かと考えを巡らせ……その人物に気づき、息を飲んだ。
真白が落ちた森の中で、頭ひとつ分高い木の真ん中辺りに人影が1つ。
動きやすそうな白っぽい服に細身の身体を包み、鹿を象った仮面で顔の上半分を隠した奇妙な男がいる。
[???]「……悪いけど、君達にあの子は渡せない」
そうつぶやくと、20cmくらいの針から伸びる透明な糸を握りしめた。
一気に遠ざかる時雨たちと、ぐるぐる回る視界。
そして身体の肉をえぐるように服の隙間を通り抜けていく冷たい風。
高いところから真っ逆さまに落っこちる、なんて経験はまさに真白にとって初めてのものであるが、好奇心旺盛な真白もこれにはさすがにパニックにならざるを得ない。
[真白]「っきゃあああああ」
独特の浮遊感に背筋が寒くなる。
ガサガサ、パキパキ、バキッ。
葉や枝などが服と肌を裂き、細かい傷から血がにじみ、増えていく切り傷が恐怖心をピークへと追い上げ、固い地面に背中が叩きつけられるのを想像して、ぎゅっと目を──
[真白]「──っうわあ!?」
……それは真白が想像していたドスンでもドーンでもなく、どちらかというとフワッ、が近かった。
何が起こったのかわからず呆然としていると、シュルン、という音とともに真白は地面に降ろされる。
蜘蛛の糸のようなものが一瞬見えたのだが、それは本当に一瞬のことで、結局真白はなぜ自分が大怪我をしていないのかよくわからなかった。
[真白]「いたた……」
身体の至るところからピリピリとした痛みが走り、腕や脚に目を向ける。
真白の白い肌に薄く裂かれた赤い傷が目立っていた。
お屋敷の中にいたときはここまでたくさん切り傷を負ったことはなかったなぁ。
……何もないところで転ぶことはよくあったけれど。
[???]「……久しぶり、真白」
そんなことをぼんやりと考えていたら、背後から声が聞こえた。
いきなりだった。
近くからの足音しか聞こえなかった。
そう、まるで『そこに突然現れた』ような……。
[真白]「誰!?」
[???(那由他)]「そっか、直接顔を合わせるのは初めてだね」
そこには、巫女服を着た可愛らしい少女がいた。
[真白]「あなたは……?」
[那由他]「ぼく? ぼくは……『那由他』」
キラキラと光を反射する髪は真白とよく似ていて。
背格好は真白とそう変わらないように見えるのに、その微笑みはどこか妖しげで。
──これから自分の中の何かが大きく変わるのだ。
そんな、落ちた時とは違った緊張感に包まれて、真白は無意識に手に力を込めた。
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1commnets
- うおさんなゆたああああああああああ