天秤
朗読[]
天秤
- 21
- 1
- 0
[残念だったねぇ……]
まったく、どうしてこうも仕事が増えるのか
銃声を聞いて歩き出す
死体の確認などしない
手応えはあった
やあ、旦那。仕事はどうだった?なんて仲立のジョンが声をかけてくる
駆け落ちした貴族の娘とその使用人。使用人を殺し娘を連れ帰る。ただそれだけの仕事。
達成した、報酬は。ジャンが答える
あんたの娘に預けたよ。早く帰ってやれ
家に急ぐ
途中女とすれ違った
それは珍しいことではない
──ただ、その女は喪服をまとっていた
墓にでも行くのだろうか?
何かが男の背中にぶつかった
嗚呼、熱い。背中が熱い
崩れ落ちながら、狂ったような女の笑い声を聞いた
なぜだ?家をジャン以外が知るわけがない
女?
ああ、あの貴族の娘か
どうしてあの娘が
──そうか
[ジャン……貴様……]
──ああ、エリス。すまない、帰れそうに──
Comment
No Comments Yet.