一人声劇 台本 「最愛の人に私が最後に出来ること」
夢花
一人声劇 台本 「最愛の人に私が最後に出来ること」
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『どうか、あなたが幸せに暮らせますように…』
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今日、幼馴染が死んだ。
末期がんだった。
病院で息絶えたのは、午前10時。
俺は学校にいて、勉強してた。
あいつは…楓は『休み』としか聞いてなくて、なんにも思わなかった。
休み時間中、母さんが青白い顔で教室に飛び込んできた。
母さんはそのまま俺を病院まで連れ出した。
「何事?」
そう聞くと、母さんは答えず、一つの病室の前に立った。
「?」
俺は扉を開けた。
最初に目に飛び込んできたのは、ベットに横たわってるあいつ。
そして、その隣にはあいつの両親がいた
泣いていた。
近寄れなかった。
母さんに押されて、ようやく気づいた。
あいつは、死んだんだって。
涙はでなかった。
あいつはただ、病院の真っ白なベットで、静かに横たわっていた…
葬式の日。
あいつの写真は笑顔だった。
あいつは、綺麗な長い黒髪と茶色がかった瞳、みんなから好かれる人気者だった。
みんな悲しんでた。
俺だけだ、泣かなかったのは。
みんなに、薄情者って言われた。
そんなことないのに。
泣けるものなら泣きたかった。
でも、涙はでない。
次の日、あいつの両親が、俺にあいつの携帯を渡してきた。
中には、俺宛のメッセージがあった。
聞いてみる。
『もしもし、聞こえますか?
ちょっと、大事な話があって…。でも、私あなたの顔を見ながらじゃ言えないと思ったから。
私ね、末期がん…みたいなの。
も、もーどーにもならないんだって!笑っちゃうよね笑昨日まで笑いすぎて死にそー!なんて騒いでたのに、ほんとに…そうなるなんて。
だからね、あなたにはちゃんとさよならしようと思ってさ!ほら、私、もー死んじゃうから!
…こんなのがそばにいたって、しょうがないじゃない?私はただ死ぬまであなたに迷惑かけて、重りになって…そーやってあなたを苦しめるだけなんだから。
あなたは優しいから!こーゆーの思ってても言わないでしょう?だから、…そーなる前に、と思って……。
最高に楽しい時間をありがとう。あなたに出会えて本当によかった。
さようなら。
……どうか、あなたが幸せに暮らせますように。』
呆れた。あいつは、死ぬ直前まで、俺のことを考えていたのか。
「バカだろ…」
そんな言葉とともに、ようやく涙が流れた。
情けない…
でも、ただ、ただ、いつもそばにいたあいつがいなかったと自覚して、心に大きな穴が空いた気がして、涙が溢れて止まらなかった。
あいつは、いつも自分のより他人で、自分は二の次だった。
他の人優先で動いていたから、人気だった。
もちろんモテていた。
『最高に楽しい時間をありがとう』
だなんて…
俺は幼馴染みだからって、あいつに意地悪ばっかりしていた。
それでも、こんなに優しくしてくれて
『俺の方だよ…お礼を言うのは…』
俺は嘆くことしか出来なくて
『そばにいれなくてごめんな…』
謝ることしか出来なくて
もうこの世にはいない相手に。
脳裏から焼き付いて離れない、あいつの笑顔。
病院のベットの上であいつは、笑顔だった。
幸せそうで、写真と同じくらいの笑顔。
これから死ぬのに…
『宝物…』
あいつは俺に、一つの宝物を残してくれたみたいだな。
『悪かったよ、ごめんな。約立たずで。』
幸せと笑顔という宝物をくれた。
俺はベランダに出て一言つぶやく。
『本当にありがとう、楓。…大好きだった。』
その言葉を残し、少年の体は闇に溶けていった…
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今回は、一人の女の子が末期がんで死んでしまう直前に、最愛の人にメッセージを残す…という、感動的ストーリー。
それも私が読んでるから、台無しだけど(苦笑)
雰囲気も素敵だし、内容はもちろん、頭に風景が浮かんでくるようでした…
儚く静かながら、悲しみな愛のお話。
本当にありがとうございました✨
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