朗読台本「旅人」
デルタ
朗読台本「旅人」
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旅人
乾いた風が身体を通り抜ける。
踏みしめる一歩には虚ろな意思だけが宿り、
辿り着くとも知れない道程を彷徨う。
最期に立ち寄ったのは、質素で温かな町だった。人の良い宿の主人は、二人とも町に留まるよう何度も勧めてくれた。僕はそれを丁重に断わり、彼女は静かに笑って僕を見送ってくれた。
途切れる事のない砂と幽鬼のような影だけが
目の前を揺らめいている。
世界から取り残された感覚に襲われ、水を一口含み、
意識を繋ぎ止める。
戻るつもりはなかった。
目的の場所は砂漠を越えた先にある。
ただ知りたかった。
知るためだけに生きてきた。
そこに答えがあると信じて。
吹き荒ぶ風が、足跡と共に微かな記憶も消し去っていく。
何かが零れ落ちては宙を舞い、砂塵に紛れて煌めく。
僕はただ虚空を見つめ、歩き続けた。
Comment
4commnets
- デルタ
- Lesuca(ゆう)@両声類になりたい!ほんと、文章のセンスあって羨ましいです><
- デルタ
- めいみ素敵な台本!でるたんが書いたの?(*´∇`*)←でるたん呼びまだ慣れない笑 そういえば!体調大丈夫?(;o;)