【朗読声劇】【記憶は戻ることはない】
貴方の名前
【朗読声劇】【記憶は戻ることはない】
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心臓をえぐられるような痛みを感じ、目をさます。
…ああ。
まただ、また戻ってきてしまった。
どこにもやりようのない孤独感が、悲しみと辛さと苛立ちを生み出しやがてそれは僕を蝕み始める。
「怖いなあ」
その恐怖は僕を侵す病原菌へでもなければ、これからの不安へとでもない。
1日が積もり積もっていくたびに、
色あせてゆく思い出への恐怖だった。
「やだなあ…」
どうしようもないこの僕を、
誰か救ってはくれないだろうか?
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解説:
病気を患う主人公。
物事を古いことから少しずつ忘れてゆく病気。
また戻ってきた、というのは代わり映えのしない毎日で時間が巻き戻されたように感じられるから。
孤独感があるのは、
病気との恐怖の戦いの中、頑張れと応援してくれるひとさえいないから。
怖いなあ、と呟く主人公は、本当は病気のことだって怖いし、
こんな病気を患っていた自分をつかせてくれる会社なんてあるのか。いや、まずこの病気は治るのだろうかと将来に不安を覚えている。
だが、最近ではその恐怖のことだって忘れかけている。
自分の病気がなんなのかさえ忘れている。
ただ自分が病気であるという、
記憶だけを植え付けて、他の記憶は粉々に砕け散っていく。
両親の優しげのある眼差しも、毎日きらきらと輝いていたあの頃の夢も。
もう、彼の記憶には存在しない。
久しぶりの投稿です!
ぜひ使ってください
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