じゅうにつき
谷川俊太郎
じゅうにつき
- 3
- 0
- 0
詩①
ろくがつは ふるい にんぎょう
あめの しずくにぬれた
がらすのむこうをみつめる ひとみ
どく(こ)へもいかずに たたずんで
だれかを まっている
ひとことも くちをきかずに
いつまでも こどものまま
いつまでも ほんのりと
ほほをそめて
しちがつは きいろい くれよん
しろいかみに
おおきな ばななを いっぽんかいて
おかあさんに あげた
どうしてか わからないけど
おかあさんが ないていたから
かみのけが あせでぬれて
おでこに くっついていた
まどからとんぼが はいってきた
はちがつは うみ
いつまでも くりかえす
なみ にうたれて
まるくすりへった
あおいびんのかけらは
どこにもうっていない たからもの
あしのうらを くすぐる
すなのながれ
すいへいせんに わきあがる
にゅうどうぐも
ゆめのような いちにち
Comment
No Comments Yet.