毛糸の鎖
一人朗読用
毛糸の鎖
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秋らしい長閑な午後。
落ち葉の上に広げたレジャーシートの上、不意に背中に熱を感じた。
その衝撃で開いていた本が膝の上に落ちる。
感じる重みは君からの信頼と、それから安心されてるっていう確かな絶望。
肩にかかる髪が擽ったくて、泣いてしまいそうで誤魔化すように頭を撫でた。
君の幸せそうな寝顔に少し頬を緩める。
風邪をひかないように、事前に持ってきた毛布をふわりと君の肩にかけた。
こうやって、君の隣で唯一無二だという顔をしてそのくせ本当の一番にはなれなくて。
一番近いから君の特別にはなり得ないんだってことに気づかないふりをして笑って。
視線の先の彼になれればと何度も叶わない夢をみて。
柔らかな毛糸で首を絞められるみたいにじわじわ苦しさが募っていった。
苦しさごと想いを吐き出して、いっそ君も苦しめてしまおうかと出来もしないことを思って、落ち葉を濡らした。
ああ、毛糸の鎖に繋がれてるみたいだ。
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