狼 (1)
間々田優
狼 (1)
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彼には沢山の未来があり 彼には少しだけお金もある
彼には大切な家族もあり 幸せそうに映っていたのに
いつもと何にも変わりのない日に会社に一本の電話が入る
病院に駆けつけた時にはもう
彼には広すぎる家が残り ただただ毎日が続きました
彼には何一つわからないまま ただただ毎日を生きました
悪い事してるのは俺だけじゃない筈だよ
殺していい奴なんてもっといるだろ
他の奴らじゃなくてなんでうちなんだ
運が悪かったとでも思えばいいのか
彼は音もなく思ったのです 彼は音もなく気付いたのです
彼は音もなく立ち上がって 彼は音もなくそれを手に取った
正しいやり方なんてあるもんか
黙って何にも無かったことになんかできるか
誰も助けてくれないのならばもう自分でやるしかないよ
彼はその日から街を歩いた
たった一つの理由なんて最早なく
彼はまるで別の生き物の様に沢山の人を殺し彼だけの正義を貫いた
苦しいのが他人に見えないのはなぜ
悲しいのが他人に見えないのはなぜ
苦しいのが他人に解らないのはなぜ
悲しいのが他人に解らないのはなぜ
だから分けてあげるよ
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