夢十夜 [朗読]
はなこ
夢十夜 [朗読]
- 33
- 2
- 0
第一夜
こんな夢を見た。
腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。
女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。
真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。
とうてい死にそうには見えない。
しかし女は静かな声で、もう死にますと判然云った。
自分も確にこれは死ぬなと思った。
そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た。
死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開けた。
大きな潤のある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。
その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮やかに浮かんでいる。
Comment
No Comments Yet.