何処かの薬売りの噺。
噺手
何処かの薬売りの噺。
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長いから収めにくいかも。
分かる人には分かる薬売り
#台本 #声劇 #朗読
時は慶長16年、夜風も熱を帯び始める頃 ________ .. 丁度初七日を過ぎた辺りだろうか、鶏鳴の暮れに独り闇夜を歩く漢は唯朧げな蒼穹へ先の闇を映し直歩んでいた。
風にたなびくのは金糸を絡めた様な髪、空を返した蒼い瞳は舶来の人形か、将又白い柔肌は浄瑠璃の艶やかな傀儡が如く端正な色を誇っている。
彼…元い薬売りは一風変わった着物に高下駄と如何にも道化交じりの装いでは在るが、その美貌故行く先々にて大変重宝された。特に嫋やかな女郎の間では「優男」と持て囃された程だ
今や彼の噂を知らぬ者はいまい
然しそんな彼も此度の行脚では苦戦する事となる。
元々国を渡り歩く業を生業として居るのだから、長く一箇所に留まる事は殆ど無いのだが…如何せん今回は長過ぎた。
その様に独り言り乍慣れ親しんだ土地を離れ峠を越えた頃、遥か千里先に都が有るとの話を耳にする。
其処を目指すのには勿論良いのだが、異国の行商人宜しく大きな荷物を背負って移動する様は田舎でもちんどん屋か、見世物屋かと見間違われる程で有る為多少様相に懸念は有るものの、それを気にする薬売りではない。
其れよりも先に宿を見つけねばならぬ。病を治す薬売りが不衛生にも野宿とは頂けない
そんな事を惘考え乍こう一言呟いた。
「 ....... さて , 如何 しましょうか、ね。」
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