一カラの小説
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一カラの小説
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「ねぇ、カラ松。明日9時に駅集合ね。デートするから。」
そう言って去った一松を見て、俺は驚愕した。
一松と付き合い始めてから約1ヵ月。初めてデートに誘われたからだ。元々奥手だった一松なため、俺はいつまでも待つつもりだった。一松のことだから3ヶ月はかかると思っていたが、とんだ計算違いだった。今にも宇宙の果てまで飛んで行きそうな心を必死に抑え、居間にいたトド松に声をかける。
「なぁ、トド松。」
「何?カラ松兄さん。どうしたの。」
「あのな…一松がデートに誘ってくれたんだ!!」
「ふーん…ってえぇっ?!早くない?!」
トド松は俺の相談役で、ことあるごとに聞きに行ったり、報告したりしていた。もちろん俺と一松の関係も知っていて、恋愛感情にとても鈍感な俺と俺の事になると闇化し、それなのに天邪鬼な一松(どちらもトド松曰く)をめでたくカップルにまでしてくれた恋のキューピッドである。驚くのもその筈、3ヶ月かかると言っていたのはこのトド松だからである。トド松に質問責めをされ、落ち着いた頃に本題に入った。
「あの…服を選んで欲しいのだが…。」
「ふくぅ?いつものあのいったい格好じゃダメなの?」
「イタ…?いや、折角デートするならいい格好していこうかなと…。」
「へーぇ。カラ松兄さんにも乙女なとこあるんだぁ。…いいよ!一緒に買い物行こう!店員さんに似合う格好聴かなきゃね!」
おう、と答え、買い物に行く準備をする。いい服があるていいな、と考えながら買い物に出かけた。
予想以上に買い物に時間がかかってしまい、夕食を食べれそうにないから近くの居酒屋に入った。俺は明日のためにあまり飲まなかったが、トド松が凄い勢いで飲んだため、家に帰った時にはもうみんな銭湯に行っていた。トド松を布団に寝かせ、一人風呂に入る。明日の為に早く寝ようと考え、みんなが帰ってくる前に寝かせて貰った。明日の事が心配で一睡も出来なかったらどうしようと思いながらもすぐ眠りについた。
朝、7時に起きた。ニートにしては素晴らしく早い朝だ。正直とても眠い。だが、集合は9時。駅は近いが、早めに待っておいて損はないと思い、8時には家を出た。まだ一松は眠っていた。その顔が、1時間後には俺の方をずっと向いているとなると、嬉しくてたまらなくなった。
9時、一松が来る気配は無かった。俺はまだ間違えて寝ているんだ、と思いその場をやり過ごした。
10時、まだ来ない。さっき起きて今急いで着替えているかもしれない。
11時、きっと時間を間違えているのだろう。
12時。正午になっても来なかった。俺は半泣きの様な状態に陥っていた。いつもはサングラスで隠せたものの、今は隠せるものなど持っていない。一松は、俺に何をしたいのだろう。俺はお前と付き合ってたんじゃなかったのか。なんのつもりで付き合っていたのだろうか。何で、来ないのか。いろんな感情がぐるぐるせめぎ合う内に涙が出ていた。駅の前で下唇を噛み、眉間に皺をよせ、泣き、嗚咽を漏らしている男を見て人はどう思っていたのだろう。もう一松が来なくてもいい。俺はここで死んでやる。と思った。その場でしゃがみこもうとした時、聞き覚えの声がする。ハッとしてそっちの方を見るが視界がぼやけてよく見えない。目を擦ろうとした瞬間、抱き寄せられた。
この匂いは、一松か。一松と俺の脳が認識した時、感情が一気に言葉となって溢れ出した。
「なんで時間通りに来なかったんだ!!俺はお前と付き合ってるんじゃないのか!!なんで、こなかった、んだ。」
怒鳴るように言っていたものの、最後は悲しくなってきて嗚咽交じりになった声を出す。すると、一松が口を開いていった。
「…嘘のつもりだったんだ。」
え、と零した口が、わなわなと震えていく。一松が俺に嘘を?デートしたいってのが嘘なのか?嘘だろ、こんなに楽しみにしていたのに。俺が嫌いな負の感情が頭の中を混乱させる。一松は俺の事が嫌いだったのか?なんで、嘘を吐いたんだ?
「なんで。」
思考能力が0に近いくらいにショックを受けていた。口を開いてやっと出てきたのはこの一言だった。
「昨日、エイプリルフールだったんだ。それで、なんかカラ松に嘘吐こうかなって思って、出たのがこれだった。僕はちゃんと嘘だって言うつもりだったけど、僕が家を出て、帰って来た時にはもういなかった。すぐ帰ってくるだろうって思ってたら全然帰ってこなくて。僕らが帰った時にはもう寝ていた。無理矢理起こす事も出来なくて、今日すぐ起きて知らせようとしてたらすっかり頭の中から抜け落ちてて。何故か朝早くに目が覚めたから、屋根の上で日向ぼっこして、猫の餌やりして、帰って来てみんなとご飯食べようとしたらカラ松がいなくて。あれ、って思った時にはトド松に殴られてた。そっからマシな格好引っ張り出して行ったらこんなんになった。本当に、ごめん。」
「そうか、昨日はエイプリルフールだったのか。だからあんな事言ってくれたのか。あ、はは。嘘でも、デート、うれじかっだ、のに、なぁっ。」
泣いたら泣きやめないと思っていて我慢していた涙が、嗚咽とともに出てくる。あれは、嘘か。なんて、悲しい嘘をつくのか。いうならもっと早くして欲しかった。それなら、もっと傷つかなくて済んだのに。よろける俺を、一松が支えながら言った。
「でも。」
「え。」
「その事に気付いて、僕いつもよりマシな服着てきたし、ちゃんとお洒落も、してきたから。」
「え?」
「今からならまだ午後デート出来るから、僕とデートしてくれませんか。今度は、嘘じゃない。今からでまだ間に合うかわかんないけど。もし良かったらで、いいから。僕と、」
「する。」
「え。」
「する。デート、するから。俺を待たせた罪晴らしって事で、デートしてくれ。」
「本当に、いいの?」
「うん。俺の時間、もらって。」
「じゃあ、遠慮なく。」
一松は持っていた白い帽子を、壁じゃない方に立て、俺にキスをした。
コラボ用でもあるからしてね!
感想がほしい丸
Comment
2commnets
- miusa*
- 愛優✾アカウント変えました*❀٭これがからくりピエロの心境か!!! うわめっちゃいい笑笑 miusa小説のセンスあるよ!!!