【朗読声劇】マッチ買いの少年【台本】

朗読してくださった優しいあなたのお名前

#朗読 #声劇 #台本 これまた童話がモチーフです。お話には登場しませんがこんな子が居ても良かったんじゃないかなあと思います。 老若男女どなたでもどうぞ！是非是非読んでくださいな！ ――――――――――――――――― なんだか今夜の街はいつもより暗いなと思った。 雪を蹴散らしてまばらな人の間を縫っていく体には一段と寒さが沁(し)みた。 今日はようやく君のところへパンを持っていける。加えて一切れのチーズと、紅茶の葉も。 これまでは夜に抜け出すのだけで精一杯だったけど、やっぱり君のマッチで灯したランプの方がお父さんの暖炉よりもずっと暖かかった。 この間君はマッチを一本つけて雪降る街にぼうっと浮かび上がっていたっけ。 できることならもっと暖めてあげたい。 来週の舞踏会、家が空くその日に君を呼んでしまおうか。 お母さんは厳しいけれど、優しいメイド長なら許してくれるだろうから。 想って探して気づけばズボンの裾(すそ)もびしょびしょになっていた。 僕は言いつけを破った悪い子だけれど、君の暖かな笑顔が見られれば十分だ。茶葉の香りはきっと白黒の街に色を運んでくれる。君と彩りを楽しみたい。 今夜の君はどの通りの角にいるんだろう？ ――――――――――――――――― どうか、冬が終わってしまう前に...。