Purest
Sooty House - Girl in the mirror -
Purest
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【 触れたこの手離さないで 】
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「おやすみ、アンジュ」
「おやすみなさい、マヤ様」
マヤ様の頬におやすみのキスをしたアンジュは、いつものように、そっとベッドから離れる。
マヤ様の睡眠の邪魔になってしまわないよう、そっと、そうっと。
細かく丁寧な動きはあんまり得意じゃないけれど、おそるおそる、静かに、小さな動きで、物音をたてないように。
「……はぁ」
無事、途中で転んだり、何かにぶつかったり、倒れてしまったりすることなく、自分の部屋に戻ることができた。
ピナフォアのエプロン部分を外して、髪の結えていた部分をほどき──思わず、ため息をつく。
不得意な動作をしたことによる気疲れ──ではなくて。もちろん、身体的な疲労でもなく。
原因は──今日の、お茶会のこと。
エリーを元気づけることができた。それは、よかった。
けど、そのあと。
ベラ様と、ラヴィに……心配、かけちゃった。
──アンジュは、身体が強くない。
それがみんなにバレたのは、『お披露目』のときだろうけれど──始まりは、もっと前だった。
これは、最初の最初からだった。生まれつきのものだった。
アンジュの記憶はいつも、ベッドの上だった。
エリーとラヴィとミアと出会う前から──外の掃除に呼ばれる前から、アンジュの身体は弱かった。
ただ部屋の掃除をしていただけのときすら、何度も体調を崩していた。
ラヴィみたいに、小さな隙間のわずかな埃まで丁寧に丁寧に取り除いていたわけでも、濡れた布巾で拭いた箇所の水気が均等になるように細心の注意を払っていたわけでもない。何度も言うけど、アンジュは細かいことが苦手だから、そんなことできない。
それなのに──簡単な掃除しかしていないのに、たったそれだけで、アンジュの身体は簡単に限界を迎えてしまう。
部屋の掃除をしていたはずが気づいたら倒れていたなんて、珍しいことじゃなかった。マヤ様のベッドの上で目を覚ますのが、日常になっていた。
ずっと、ずっとそうだった。
ずっと昔から、無茶とも言えないような少しの無茶をするたびに、アンジュは寝こんでいた。
誰もいない部屋にひとつ、ぽつんと置かれたベッド。
そこが、アンジュの定位置だった。
アンジュには、空の色なんて関係なかった。
空が水色の時間も、真っ青な時間も、橙色が混じった時間も、紺色の時間も、ずっとベッドの上にいた。灰色に覆われている日も、水滴や氷の塊が降っている日も、ベッドの上以外の場所にはいなかった。
そんなアンジュのそばには──誰もいなかった。
誰も……いてくれなかった。
そばにいてくれるはずの人たちは、アンジュのために、ずっとずっと頑張ってくれてた。
アンジュができない無茶をたくさんして、ベッドの上じゃないところで、寝こむことなくたくさん頑張ってくれた。
アンジュは、その頑張りを知っていた。それが、アンジュのためだっていうのは、わかってた。
ちゃんと、わかってた。
わかってた、けど。
けど……アンジュは。
アンジュは──さみしかった。
悲しくて、寂しくて。
苦しくて、辛くて。
暗くて冷たくて。
そんな泣いちゃいそうな気持ちの海に、ずぶずぶ沈んで。
誰もいない部屋を見るのも嫌になって、ずっと目を閉じていた。
アンジュは、ただ……そばにいてほしかった。
ずっと、そばにいてほしかった。
……この『ずっと昔』がいつの何の話なのかは、よくわからない。『そばにいてくれるはずの人たち』が、誰のことを指すのかも。アンジュはやっぱり、細かくて難しいことを考えるのは、苦手だから。
けど──よくわからなくても。
アンジュの中にある心の隙間は、本物。
……ううん。
本物、だった。
だって、アンジュは。
マヤ様に、出会えたから。
巡り会えたから。
マヤ様は、あの人たちとは違った。
今も、目を閉じているあいだは、苦しくて寂しくて、泣いちゃいそうな気持ちでいっぱいなのだけれど。
けど、けどね。
今は、目を開いたら──マヤ様がいるの。
マヤ様は、アンジュの意識があってもなくても、ずうっと手を握ってくれていて。
それで、アンジュの顔を、覗きこんでくれているの。
アンジュだけを、見守りつづけてくれているの。
そして、アンジュが起きたことに気づいたら、安心したみたいに息を吐いて、「大丈夫?」って、やさしく聞いてくれるの。
一度や二度じゃない。
いつも、絶対に、マヤ様はそうしてくれる。
そばに、いてくれている。
だからきっと、マヤ様は──ずっと、そばにいてくれる、って。
そういうふうに、アンジュは思うの。
だから……もう、さみしくない。
マヤ様は、涙の零れる目を閉じたアンジュの腕を引いて、ベッドの上から外の世界へ連れ出してくれた。
そんなマヤ様のために、アンジュは──もっともっと頑張りたい、って思う。
頑張ったら、また倒れてしまうかもしれないけれど……アンジュがいつ倒れてしまっても、マヤ様が、手を握っていてくれるから。離さないでいてくれるから。
そんなあたたかくて眩しい運命を大事にして、これからも、マヤ様と一緒に、生きていきたい。
だから──心配しなくても大丈夫、って。
改めて、ラヴィに伝えたいな。
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𝒍𝒚𝒓𝒊𝒄𝒔
🕊ひとり、貴方だけを
真っ直ぐに見つめてるピュアレスト
🎩ひとり、君の事を
守り抜くと決めたピュアレスト
🕊巡り合った🎩ふたりだけの
🎩🕊運命感じたい
🎩🕊愛してるどんな気持ちよりも
純粋な想い
嗚呼 触れたこの手離さないで
いつまでもぎゅっと強く
𝑪𝒂𝒔𝒕
🎩マヤ(cv.はいねこ)
https://nana-music.com/users/7300293
🕊アンジュ(cv.春野🦔)
https://nana-music.com/users/9844314
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𝑻𝒂𝒈
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