🎪 お疲れ様です ご臨終 🎭
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第2幕『正義の理』前編
スヴァルト・クォーレは、第三次世界大戦が終結してから四年後、最北の敗戦国のとある村で生を受けた。戦争難民たちが寄り添うようにして出来たその村は、毎日食べていくのもやっとという酷い貧困状態であったが、スヴァルトは持ち前の素直な性格と好奇心を存分に発揮して伸び伸びと育っていった。あたたかい家族や村の人々に囲まれた、貧しいながらも幸せな暮らし。こんなささやかで平穏な日常が、いつまでも続くと思っていた。
だが、彼の中に潜む狂気が顔を覗かせるのに、そう長い時間はかからなかった。それはある日曜の昼下がりのこと。台所で夕飯の支度をしていた母が、突如叫び声をあげた。スヴァルトが慌てて駆け寄っていくと、母の指さす先には大きな黒い虫が這っていた。スヴァルトは母親が虫を怖がっているのだと即座に了解し、その場にあった短剣で躊躇することなく虫を突き刺した。
「あぁ、スー、ありがとう。あなたは勇敢ね」
母親は安堵して彼を抱きしめようとした。しかし、彼は母の抱擁になど気づきもしない様子で、じっと動かなくなった虫を見つめている。そして、潰れたその体からゆっくりと短剣を引き抜くと、今度は虫の四肢をバラバラに切り刻み始めたのだ。
「ス、スー? 何をしているの? 虫ならもう死んでいるわ。もう何もしなくていいのよ」
「でも、こいつは母さんを傷つけたでしょ?」
幼い子どもとは思えぬ、冷淡な口調だった。母親はそこで初めて、息子の異質さに気がついた。スヴァルトは、母が顔を引きつらせているのもお構い無しに、口の端だけを引き上げて続けた。
「この前、旅商人のおじさんからもらった、古い歴史の教科書で読んだんだ。僕が生まれる前に起こった戦争で、僕らの国の人達はたくさん死んだんだって。僕らが今貧乏なのも、そのせいなんだって。……僕らの国を攻撃した人達は、昔この国の人に傷つけられたことがある、だから殺してもいいんだ。そう言ってたんだって」
そういえば、最近村を渡り歩いているという商人から、好意で古本を譲ってもらったのだと聞いたことがあった。まだ十にも満たぬ彼に、書物の内容が理解できるだろうかと思っていたが、どうやら真逆だったようだ。年齢に似合わぬ達観した話ぶり。その口調はまるで、戦勝国を憎んでいるようにも受け取られた。
「だからね、母さん。僕も、僕達を傷つけるやつは、こんな風にしてもいいと思ったんだ。教科書に載っていることは正しいこと、だもんね」
母親は、何かを言わねばと咄嗟に口を開いた。このままでは、息子は何か恐ろしいことに手を出してしまうようになるのではないかという戦慄が、一瞬頭の中を駆け巡った。しかし彼女は、同時にこうも思っていた。所詮子どもの無垢な考え。心配せずとも、年を経るごとにそんな思考は消え失せていくはずだと。
「……ええ、虫をやっつけてくれて、ありがとう」
結果として、彼女はその異質な何かから目を逸らすことにした。改めて抱擁を交わした息子は、陽だまりのように柔く良い匂いのする、優しくて良い子。先程のアレは何かの見間違いだったのだと、自らを納得させた。
「けれど今思えば、私があの時、あの子に別の言葉をかけてやっていれば……」
スヴァルトを首謀者として発生した未曾有のテロ事件から数ヶ月後、メディアの取材を受け入れたクォーレ夫人は、涙を流しながらこのように語ったのだった。
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〖LYRIC〗
大人になるほどDeDeDe
はみ出しものです伽藍堂
人生論者が語った
少女は鳥になって
綺麗事だけでPaPaPa
ボロボロの靴を結んで
デジタル信者が祟った
少年は風になって
ゆらりくらり大往生
お疲れ様ですご臨終
テレキャスタービーボーイ
僕に愛情を
嘘で固めたウォーアイニー
うざったいんだジーガール
魅惑ハイテンション
カニバリズム踊れば
一つ二つ殺めた手で
何を描いているんだろう
テレキャスタービーボーイ
僕に愛情を
誰か答えてくれないか
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〖CAST〗
👾スー(cv:くらげ∞)
https://nana-music.com/users/1819852
〖ILLUSTRATOR〗
冬猫
https://nana-music.com/users/5429105
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〖BACK STAGE〗
‣‣第1幕『君の屍はどこへゆく』
https://nana-music.com/sounds/067c248b
〖NEXT STAGE〗
‣‣第3幕『正義の理』前編
https://nana-music.com/sounds/067f714d
#CIRCUS_IS
#テレキャスタービーボーイ #すりぃ #ひびきアレンジ
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