パセーニョ伴奏でこの曲を歌ったら、こんなストーリーが浮かんできました。
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誰とでもいいから話がしたくなって、俺は海辺の小さな宿屋の外に出た。
降りしきる雪の中、やっと見つけた紅い灯を頼りに、波止場に面したその店にたどり着いた。
「まだやってるかい?」
建て付けの悪い引き戸を開けて、声をかける。
「お客も来ないし、もう閉めようとしてたところ。大した物は出せないけど、よかったらどうぞ」
あっという間に曇る眼鏡を拭いながら見回すと、どうやらこの初老の女将一人で切り回している店のようだ。店は静まり返って、石油ストーブの上のヤカンだけがシュンシュンと低い音を立てている。
とりあえず頼んだ熱燗をチビりと飲りながら、何やら作っている女将の背中に声をかける。
「かあさん、今年は何かいいことあったかい?」
女将は振り返りもせずに
「なーんもだ。いいことあったら大晦日のこんな時間まで店なんか開けてないっしょ」
イカの刺身が出てきた。徳利を手に、俺にお酌しながら「もっともこんな田舎の港町で年越しだなんて、どうやらお客さんもいいことあったクチじゃなさそうだね」と女将は笑う。
俺はそれには答えず、しばらく続いた沈黙に耐えかねたのか、女将はラジオのスイッチをひねる。
雑音だらけで聴きとりにくいが、どうやら紅白をやっているらしく、演歌が流れてくる…吉幾三の雪國だ。
「でもねぇお客さん、来年こそはいいことあるかもしれないっしょ?」
「来年か…」
「生きていれば必ずいいことあるから」
「おいおい、まるで俺が…」
「あのね、最初にお客さんの顔を見たとき…何て云うのかな『死相』みたいのを感じたんだよ、まるで首を括る前の、アタシの亭主の時みたいな…」
俺は思わずコートのポケットにあるガラスの小瓶を握りしめる。
ラジオはいつの間にか「ゆく年くる年」に変わっていた。
……
「生きていればいいことある…か。じゃあこれはもう要らないな」
苦笑いしながら俺は店の真ん前の波止場から、真っ暗な海に向かってあの小瓶を思いっきり投げた。
「お客さん、お客さん」
後ろで女将が呼んでいる。
「あの…お勘定まだなんだけど」
#コラボ歓迎 #今年ももう少し #演歌bossa #パセーニョ伴奏 #くるみちゃん
Comment
18commnets
- 豊ちゃん.ᐟ .ᐟ
- 半角斎
- ことのは逢(あい)@Androidセリフ読ませていただきました🙇 コラボさせていただき、ありがとうございます💕☺️💐
- 豊ちゃん.ᐟ .ᐟ
- 半角斎
- pooh④常連になる でお願いします笑笑 楽しかった
- ⭐️な⭐️③❣️でお願いします🤣🤣🤣 やってみたいですね←
- 半角斎
- 半角斎
- ⭐️な⭐️オチがありました🤣 シリアスかと思いきや さすが半角斎さん! 今年もお世話になりました🙇♀️ そして、お疲れ様でした!
- 。(くてん)オチ🤣
- こり🐸クロハモ蛙🐸
- 半角斎
- 半角斎
- こり🐸クロハモ蛙🐸オチを期待しながら読んでるワタシが居ました😁 サウンドはシリアス&ステキ
- 🎼郵鈴♪😅🎵🙏🎤nana活ゆっくりなってます⭐𝒯𝒽𝒶𝓃𝓀 𝓎𝑜𝓊⭐︎♬°・*:.。.☆半角さん🍀おはようございます🌄 オシャレなsoundと優しい歌声です♪ ストーリー読んでいたらすごいバッチリな雰囲気でしたが(^-^)v 最後のオチで爆笑(⋈◍^◡^◍⋈)⋆ฺ。* ありがとうございます୨୧ *⑅❤︎·̩͙
- 半角斎
- 🍁ゆきみん🍁キャプ読んでたら3回聴けた😆 頭の中でドラマ見た感じ👍 ステキなキャプションとオサレな歌でした👏👏👏👏👏👏