ラストリゾート
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
ラストリゾート
- 98
- 8
- 0
__𝔼𝕤𝕔𝕒𝕡𝕖 𝕚𝕟 𝕒 𝕨𝕠𝕣𝕝𝕕 𝕨𝕚𝕥𝕙𝕠𝕦𝕥 𝕖𝕤𝕔𝕒𝕡𝕖.✩₊*˚
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
咲羽の死の原因を作った蛇遣い座の少女は、ただ星巫女を救いたいだけだった。
彼女の言葉を聞いた時の祈鈴は、どんな表情をしていたのだろうか。込み上げた感情の整理がつかないまま、耳朶を打った言葉だけがぐるぐると脳裏を巡っている。
零が星天界を壊そうとして、それを止めようとしたせいで咲羽は命を落とした。彼女がいなければ、もしかすると咲羽は今も生きていたかもしれない。そのことを思うと、胸の奥からやりきれない怒りが湧き上がる。だけど、それを零にぶつけたくはなかった。
零はただ、彼女の友人を助けたいだけだった。星巫女達を救いたい、それだけだと知ってしまったから。
祈鈴が彼女の立場だったとしたら、きっと同じことをしていただろう。星巫女は、死んでもなお新たな生け贄を生み出すための土壌となる。そう知ってしまえば、大切な人を解放したいと思うのは当然だ。
だから何も言えないまま、そっと目を逸らした。祈鈴の中に湧いた感情を飲み込めるようになるまでは、そうすることを許して欲しかった。
「……神様が心鍵に閉じ込められている限り、私達にはどうすることも出来ない」
零が言葉を続ける。何十代も世界のために犠牲にされた星巫女の行く末を見てきたという、彼女の言葉は重かった。
「今まで、現状を変えようとした星巫女は沢山いた。貴方達の代のように、心鍵を捨てようとする星巫女も何人か見てきた。それでも、何も変えられなかった。何も変わらなかった」
心鍵を捨てようとする星巫女――千歳のことを言っているのだろう。
心鍵は、星巫女が星巫女であるために必要なもの。だから、心鍵がなくなれば星巫女の務めからも解放されるのではないか。
千歳はそう考え、危険を承知でそれを実行に移し。その結果、彼女は命を落とした。祈鈴は、それを止められなかった。
「それでも、私が試さなければいけないと思うんです」
千歳は最期に、祈鈴にそう言った。どうして彼女がそんなことを言ったのか、祈鈴は今でも分からない。二度と聞くことは叶わない。
あの時、千歳を止めていれば良かった。彼女のことを思い出す度、そんなことを思う。
命を賭してまで、千歳は一人で儀式を行ったのに。この世界は、何一つ変わらなかったのだから。
何一つ、変わらなかった──そうだ。千歳の橙の心鍵は、変わらず彼女の亡骸の傍にあった。彼女は心鍵を捨てて歌った末に、命を散らしたにも関わらず。蠍座の心臓は、変わらず夜空で輝き続けていた。
「千歳さんが亡くなった後……心鍵は、星天界にありました。心鍵を捨てて歌ったはずなのに」
真っ直ぐに零の瞳を見据え、そう口にする。彼女に対して抱いた感情に、整理がついたわけではない。だけど、彼女がもし何かを知っているのなら――祈鈴も、それを知りたかった。咲羽が、千歳が、他の星巫女達が。どうして死ななければならなかったのか。それを知ることが、祈鈴に出来る唯一の弔いのように思えたから。
「心鍵には、神様が閉じ込められているから……心鍵自体が、星天界に囚われている。死んだ星巫女達の魂と同じように。だから、星天界から捨ててもまた、元の場所に戻ってくる」
私の心鍵は割れてしまったから、もう元には戻らないけれど。目を伏せて、零はそう言葉を紡いだ。濡れた睫毛が微かに揺れた。
「紅愛の……私達の代の星巫女の魂も、星天界の一部になっているんですか」
そう訊ねたのは藍空だった。途切れ途切れの、歪な口調。その声は微かに震えていた。
祈鈴と違い、藍空は直接大切だっただろう人を撃ち殺している。
それだけでも相当辛いことだっただろうに──その魂が輪廻から外されて囚われ続けると知って、平気でいられるわけがなかった。
藍空の疑問を受けた零は、首を小さく横に振り、割れた心鍵の残骸を掲げた。祈鈴達が持っているものと同じ金属部分に、割れた宝石の欠片が引っ掛かっている。本来宝石があったであろう部分はほとんどが空洞で、わずかな黒い宝石の破片が残っているのみとなっていた。もう星天界には囚われていないというそれは、まさに残骸と称するに相応しい有様だった。
「私の心鍵の中にいた、蛇遣い座の神様は……私が願いを叶えて、死んだ」
その言葉に、藍空が大きく目を見開いた。神様が、死んだ。零が願いを叶えたせいで。彼女の願いを叶えることによって死んだのか、それとも零が神様の死を願ったのか。それを訊ねられないままに、零の話は続いていく。
「私の魂はまだ、中途半端に神様と混ざり合っている。蛇遣い座の神様の残滓が、私の中に残っている。必要以上に星天界を攻撃しようとしたのも、きっと神様があの場所に戻ろうとしたからだと思う。私の意思は、もう私だけのものじゃないから」
怒りと諦めと虚しさの入り混じった表情で、彼女は語った。その表情を見て気付いた。きっと今の祈鈴も、彼女と似た顔をしているのだろうと。零の言葉は続く。
「私の魂に残った破片に、神様の魂を集める力が取り残されたのだと思う。今の私が魂を見ることが出来るのも、きっとそれが原因」
蛇遣いの星座はかつて、死者をも蘇らせる医者だったという。だから死者の魂を集める役割を担っていたのではないか。零はそう話した。
「今期の星巫女の魂は、今この宝石の欠片の中に眠っている。神様とは、分離した状態で。神様は、心鍵の中から出ることは出来ないから……きっと、今でも心鍵の中に閉じ込められ続けている。魂を拾っているのは……出来るだけ、星天界に取り込まれる魂を減らしたかったから。彼女達は今も、この中にいる」
そう言って零は、黒い宝石の欠片を指し示した。あの中に、咲羽と千歳がいる。そう思うと、光を失った彼女の心鍵の破片が澄んだ光を灯したように見えた。二人は今も、祈鈴のことを見ているのだろうか。二人の優しい声と温度が蘇り、視界の奥が滲んだ。
「だけど、私のところに残った蛇遣いの神様の力は完全じゃない。星巫女の任期が終わる頃には、彼女達の魂は星天界へと取り込まれる。それを止めることは、出来なかった。新しい星巫女が選ばれれば、彼女達の魂は永遠に星天界に囚われ続けることになる」
つまり。神様が閉じ込められている限り、星巫女は世界を守るために儀式をするしかなくなる。その結果、星巫女は死に続け、その魂を取り込んだ星天界は少しずつ大きくなっていく。星巫女に必要なものが供給される仕組みも、星巫女達の魂の蓄積が星天界を維持するのに必要なエネルギーを上回った結果、星巫女達の願いに応えるようになったのだろう。零はそんな言葉で話を締めくくった。
星巫女を取り巻いているのは、神様を閉じ込めた中央政府でさえもきっと止められない、完成された循環システムだった。
「願いを叶えたということは……星巫女は務めを終えると願いを叶えてもらえる。あの噂は本当なんですよね。それでも、誰も変えられなかったんですか」
藍空が言い放ったその言葉に、零はくしゃりと顔を歪めた。憂いているような、後悔しているような、そんな表情だった。
「あの言葉は、作られた嘘の話」
泣き出しそうな声で、そう言葉が返される。だけど零はさっき、願いを叶えたと言っていた。願いを叶えたせいで、蛇遣いの神様は死んだのだと。
「それなら、あなたはどうやって願いを叶えたんですか」
祈鈴の心を代弁するかのように、藍空が口を開いた。唇を引き結んだ零は、何も言わない。話すことを拒んでいるようだった。
静寂が暗闇を支配し、時間だけが流れていく。沈黙の後、覚悟を決めたかのように、零は言葉を紡いだ。
「……心鍵が割れると、願いが一つ叶えられる」
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
⚡️くしゃくしゃの頭の中で考えている
十四時過ぎに開いた目がぼやけてる
⚜️嗚呼またやって来た今日に舌打ちをして
始まる僕の 最終演目
⚖四十二度溜息とスモーク
リンスー切れてたんだ洗濯も溜まってたんだ
まあもういっか
🔥狭くなったベランダの様だ
ゴミ溜めの様だ
それが僕だった
🔥⚡⚖⚜️さあ何処までだって行こうか
嗚呼此処までだって笑った
⚡️⚜️逃げ場の無い世界で逃避行
🔥⚡⚖⚜恐れは無いな もう無いな
歩き疲れたところで
終わりにしようか
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♋︎Cancer #星巫女_紅愛
🔥紅愛(cv.未蕾柚乃)
https://nana-music.com/users/2036934
♌︎Leo #星巫女_柊葉
⚡️柊葉(cv.木綿とーふ)
https://nana-music.com/users/6261792
♎︎Libra #星巫女_藍空
⚖藍空(cv.くろ)
https://nana-music.com/users/1544724
♐︎Sagittarius #星巫女_刹那
⚜️刹那(cv.ハナムラ)
https://nana-music.com/users/8640965
₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴Ayase様
https://nana-music.com/sounds/04c7dae4
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
Comment
No Comments Yet.