回る空うさぎ
Sooty House - Girl in the mirror -
回る空うさぎ
- 38
- 7
- 0
【 君と明日はイコール 】
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
夢を、見ていたようだった。
いつだかわからない──ううん、こんな言い方じゃ、過去を遡っていれば、いつだかわからない『いつか』に、この記憶が存在しているみたいよね。
どこだかわからない、けれどなぜだか浮かんできた、ベラの記憶──あるいは、夢。
ベラは、ひとりぼっちだった。
そこはとても暗くて、暗くて、暗くて暗くて、光なんてなかった。
そして、とても狭かった。周りはふわふわしていたから、息苦しくはなかったのかもしれないけれど、そのふわふわしたもので、ぎゅうぎゅうに押し潰されてしまいそうで──というか、そのふわふわとふわふわの間に無理やり押しこまれてしまっていて、すごく狭かった。
そんな場所に、ベラはひとりで存在していた。
明確に記憶があるわけではないのよ。情景が、感情が、思い出せるわけではないわ。
だけど──暗くて狭い底なしの孤独の夢が、たしかにベラにはあったの。
でも、この夢は──『寂しい』だけでは終わらなかった。
これは、悪夢ではなかったの。
底なし、なんて言ったけれど──夢の中のベラの孤独には、終わりがやってきた。
いつだったかはわからない。孤独が続いた時間も、孤独から解放されてからの時間も、ベラにはさっぱり。時間的な感覚は、夢の中のベラにはなかったから。
だけど──ある日を境に、ベラはとってもあたたかくなったの。
どんな時間も、あたたかい感触に包まれるようになった。
あれはきっと、誰かのぬくもりだった。
ぬくもりは、ベラから片時も離れなくって──ベラは、ひとりぼっちなんかじゃなくなったの。
夢の中のベラは、自分をずっとひとりぼっちのままなんだって思いこんでいたけれど──そんなことはなくて。なくなって。
ぬくもりは、ずっとベラの傍にいてくれた。いつも一緒にいてくれた。
そして──今も、ベラの隣にいてくれている気がする。
それなら──それなら、目を覚まさないと。
ひとりぼっちの夢が終わって、ぬくもりの夢になって。
その夢が、今のベラにも繋がっているのなら──怖がる必要も、寂しがる必要もないわ。
……まぁ、ベラはもともと、怖がったり寂しがったりなんてしないのだけれど!
けれど──もう、このぬくもりから手離されたくない、なんて思わなくってもいいのよね。
また暗くて狭い孤独に戻ることを、恐れなくていい。
だって、ベラを包んでいたぬくもりは、今も隣に在るのだから!
それを、思い出せたのだから。
だからもう、目を閉ざしつづける意味なんてないわ。
ベラは、もっともーっと世界に触れて、どんどん完璧なシャドーになるんだから!
だから──夢の時間は、おしまいよ!
◇◇◇
夢を、見ていた気がした。
いつだかわからない──生き人形として製造されて初めて命を吹きこまれたラヴィには、決してこんな『いつか』は、こんな記憶は、存在するはずがないのですけれど。
いつだかわからない、けれどなぜだか浮かんできた、ラヴィの記憶──あるいは、夢。
ラヴィは、ひとりぼっちでした。
よく、わからないのですけれど──夢の中のラヴィは、『むら』の『そんちょうさん』の『ひとりむすめ』という存在だったようです。
そして、とても息苦しかった。ラヴィは夢の中でもお話が下手で、やっぱり何をするにも鈍くさくて……だけど、『そんちょう』の『ひとりむすめ』というだけで、小さなラヴィは、たくさんの無茶を、無理を、無理難題を、期待を、願いを押しつけられて──すごく息苦しかった。
そんな状況にいたのは、ラヴィひとりだけでした。
明確に記憶があるわけではありません。情景が、感情が思い出せても、『むら』や『そんちょう』などの言葉の意味や、詳しい環境が思い出せるわけではないのです。
だけど──息苦しくて寂しい底なしの孤独の夢が、たしかにラヴィにはありました。
でも、この夢は──『寂しい』だけでは終わりませんでした。
これは、悪夢ではないのです。
底なし、なんて言いましたが──夢の中のラヴィの孤独には、終わりがやってきました。
いつだったかはわかりません。孤独が続いた時間も、孤独から解放されてからの時間も、ラヴィにはさっぱり。時間的な感覚は、思い出せないことのひとつなのです。
だけど──ある日、ラヴィはとってもあたたかくなりました。
どんな時間も、たったひとりの味方を抱きしめれば、何でも頑張れるようになりました。
それは──ちょっぴり黒ずんだ、うさぎのお人形でした。
夢の中のラヴィは、うさぎのお人形を片時も離さなくなって──ひとりぼっちなんかじゃなくなりました。
夢の中のラヴィは、自分をずっとひとりぼっちのままなんだって思いこんでいましたが──そんなことはなくて。なくなって。
うさぎのお人形は、ずっとラヴィの傍にいてくれました。いつも一緒にいてくれました。
そして──今も、ラヴィの隣にいてくれている気がします。
それなら──それなら、目を覚まさないとですね。
ひとりぼっちの夢が終わって、うさぎのお人形の夢になって。
その夢が、今のラヴィにも繋がっているのなら──怖がる必要も、寂しがる必要もありませんね。
だってラヴィには、たったひとりの味方がついているのですから。
ですから──もう、うさぎのお人形を手離したくない、なんて思わなくってもいいんですよね。
また息苦しくて寂しい孤独に戻ることを、恐れなくていい。
だって、ラヴィのたったひとりの味方は、今も隣にいるんですから。
それを、思い出せたのですから。
だからもう、目を閉ざしつづける意味なんてないのです。
ラヴィは、もっとたくさん世界に触れて、ちょっとでも優秀な生き人形になるのですから。
だから──夢の時間は、おしまいです。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
𝒍𝒚𝒓𝒊𝒄𝒔
🥀また夜空一周に
満たして欠いて流れる
⏳時を眺める
だけじゃ笑えない
🥀回る空うさぎ
君と明日はイコール
⏳負けるな明日に
背を向けたくない
⏳あぁ から から
🥀いま から から
🥀⏳遥か 月を目指した
今日の空は
彼方 西に流れた
もう届かないや
届かないや
𝑪𝒂𝒔𝒕
🥀ベラトリクス(cv.あかりん)
https://nana-music.com/users/912797
⏳ラヴィ(cv.木綿とーふ)
https://nana-music.com/users/6261792
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
𝑻𝒂𝒈
#Sooty_House
#回る空うさぎ
Comment
No Comments Yet.