零レル言葉
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零レル言葉
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drama …
ぽつりぽつりと雨が静かに落ちていく。
それはまるで俺の心を表しているようだった。
日「私、あと少しの命なんです」
初恋相手の言葉に耳を疑った。あまりの衝撃で言葉が出なかった。文学者が聞いて呆れる。
日「だから貴方と会えなくなってしまう」
寂しい、悲しい、そんな言葉が聞こえてきそうな声で呟いた。
友「そんな…、何か…方法はないんですか」
金で解決するなら迷わず払うつもりでそう問いかけた。しかし彼女は首を横に振るだけで何も言わなかった。
二人の間に重い空気が流れる。
そんな中、彼女は言葉を俺に投げかけた。
日「残りの時間も私と過ごして下さいますか?」
その質問はあまりに切なく、そして嬉しいものだった。
友「勿論です」
たった一言だったのにも関わらず彼女は太陽のように眩しい笑顔を見せてくれた。
あれから俺はやりかけの原稿を放り投げて、1枚の便箋を用意した。彼女に俺の胸の内を明かすのだ。いざ書き始めるもどれもこれも微妙な出来で、丸まった紙が部屋中に転がる一方だ。
どんな言葉なら貴女に伝わるだろうか。
どれだけ綺麗に描ければ貴女に伝わるだろうか。
答えのない問いを抱きながら万年筆を必死に動かした。
◇◇◇
やっとの思いで書き上げた一通の手紙。彼女に気持ちは伝わるだろうかと不安を胸にいつもの時間にいつもの場所へ訪れた。
今日もあいにく雨模様。この前よりどんよりとしており、雨が激しく地面を叩いていた。
友「今日は貴女に渡したい物があるんです」
そう言って俺は手紙を取り出した。彼女は驚いた顔を見せたが、たちまち笑顔へ変わり受け取ってくれた。
彼女は受け取ってすぐ手紙を取り出し読もうとした。しかし、そこに書かれてあったはずの文字は消えてしまっていた。
日「雨に濡れて文字が滲んでしまったみたい」
友「すみません!書き直して来ます」
残念そうに眉を八の字にする彼女に謝って手紙を返してもらおうとするが、彼女は返してくれなかった。
日「返したくありません。これは初めて貴方から貰った物なので」
何が書かれていたか分からない手紙を貰っても嬉しいはずがないのに、彼女は目を細めて心底嬉しそうにそう言ったのだった。
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[cast]
文学者 真白友也(cv.オズ)
女性 巴日和(cv.ヨモギ)
#時代を超えし物語
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