本性ハドレダ
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本性ハドレダ
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drama …
これは1人の天才の話だ。
この病院には大変可愛らしい齢19の看護師がいた。先生や同僚は勿論、患者までもが彼女の事を気に入っていた。まさしく院内の人気者。
「ユリ子さん、今日も元気が良いわね」
「勿論、それが私の取り柄ですもの」
部屋を出ていく患者に お大事にどうぞ と声掛けながら見送る。ピシャリと戸が閉まれば、ユリ子はテキパキと医師が使った器具や書類を片づけ始める。医師も書類に書き込みを入れたりするため、会話をする事は殆どない。
しかしこの日だけは違った。
「そう言えば君、白鷹先生とお知り合いだそうだね。良かったら紹介してくれないか?」
医師の言葉を聞いて、ユリ子は何とも言えない気持ちにさせられた。心がスっと冷めていくのを感じながら、薄ら笑みを浮かべて発するべき言葉を述べた。
「えぇ。先生のお力になれるのなら」
それから数日後、ユリ子は約束通り医師に白鷹を紹介し電話越しの交流が始まった。しかし医師と白鷹はなかなか上手く行っていない様子だった。
「臼杵先生。白鷹先生から伝言を預かっております。『風邪を引いて寝込んでいるからまた次の機会に』だそうです」
「またか…」
果たしてこれで何度目だろうか。
会う約束の日の直前になると、こうしてユリ子を通じて断りを入れてくるのだ。
それ故にまだ1度も医師、基臼杵は白鷹に会えていない。
臼杵はこの事実を妻へ愚痴を言うかのように話した。すると妻は難しい顔をした。
「おかしな話ですね。姫草さんが何か企んでいるとしか思えません」
これが女の勘と言うやつか、なんて思いながら臼杵は妻の言葉を頭の片隅に置いた。
◇◇◇
翌日から臼杵はユリ子を疑うような目で見るようになった。しかし目に映るのはいつもと何ら変わりない愛らしい19の少女だった。
「臼杵先生、本日は医師会の会合でしたよね」
「あぁ。私が居ない間、留守は頼んだよ」
「はい、先生」
やはり気の所為だったかと思いながら病院を出た。しかし偶然医師会の会合で念願の対面を果たした白鷹に、衝撃的な言葉を投げられた。
姫草ユリ子は 嘘の天才 だと_____。
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[cast]
姫草ユリ子 シオ
臼杵 りと
#時代を超えし物語
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