盲目ノ踊リ子
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盲目ノ踊リ子
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drama …
黒が全てを埋め尽くすこの世界で、毎日決まって聞こえてくる音がある。
「ようこそ、見世物小屋へ!」
いいものをお見せしよう、と男が声を張り上げながら私の腕を引いた。毎日こうして同じ場所に連れ出されている。
最初こそ戸惑いただ呆然と立ち尽くしていただけの私だが、何度も同じことを繰り返していると自然と慣れてくるものだ。
私は声も出さずに何人いるかも分からない客に向けて踊りを披露する。
私は今、何色のドレスを着ているのだろうか。
そんな事は考えても仕方がない。色をこの目で見た事が無い私は、想像しても結局全て黒色になってしまうのだから。
世界は色で溢れている。
誰かはそう言った。ただただ羨ましい、そう思った。私の世界は黒一色だから。
嗚呼、一度でいいからこの目で鮮やかな世界を見てみたい。
そんな叶わぬ願いを胸に秘めながら私は今日も淡々とワルツを踊るのだ。
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[cast]
踊り子 燈露
団長 燈露
#時代を超えし物語
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