ナイト・ブルー・センセーション
音楽:ええむ 様/文章・声:蒼#1925
ナイト・ブルー・センセーション
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無数の星の中に飛び込んだ
夜の底。一人、喧噪を背にした。温い電灯。まぶたを染めるそれは、計り知れない闇であった。
ブルーライトに焼き込まれた静けさ、あるいはたましいを引き留める枷。
しばらく前から秒針の音は絶えている。それは些細なことだった。0と1に構成された青には必要のないものだ。
今日も、雨音がありふれた硝子を叩いている。宇宙の彼方へ旅する空想をした。思考だけで夢を見て、思考だけで罪を犯す。誰もわたしの、この、脳の中を暴くことはできない。脳核に刻まれた「わたし」という名の錯覚に今も溺れている、果てしなく拡がっていく果実の染みのように。
ときどき、思考だけで人を殺した。無意識で跳ねる肢体は覚醒と幻影のスペクトラム。眠れないなら夜は明ける。
おはよう、世界。今日でさようなら。
(ねぇ、リリィ)
(それは美しい星の夜だったね)
(遠く星のかけらが空を旅した)
(終わらない記憶と夢に聴いた歌だった)
(見送ってくれたのだと思ったよ)
(ひとりはさみしいから、ゆくさきを教えてくれる、歌)
(永遠というものがあるとするなら、この指先に現れてはくれないかと祈った)
(ほんとうは、水さしのうたかたのように、ふたしかなものだったのに)
(いのちというものは、果実を潰す程度の力があれば潰えてしまうものなのだ)
(それは誰にもひとしいことを、ぼくたちはわすれてしまう)
(おやすみ、世界。今日でさようなら。)
#蒼の朗読
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